リブランディングの進め方|企業の“再定義”で未来を描き直す

企業が大きな変化を迎えるとき、ブランドもまた“再定義”が求められます。新たな市場への参入、M&Aや事業承継、あるいは理念のアップデート──そんな「再スタート」の節目に必要なのが「リブランディング」です。
リブランディングとは、過去のブランド資産を活かしつつも、現状と未来の理想像に合わせてブランドを再設計するプロセスです。単にロゴを変える、キャッチコピーを刷新するだけでなく、「自社は何者で、誰に、どんな価値を届けるのか」を見直し、それを内外に発信していく設計が求められます。
本記事では、福岡という地域に根ざした企業が、どのようにしてブランドを再定義し、次の成長フェーズへと進むのか。その戦略的アプローチと実践方法を、段階ごとに解説していきます。
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企業を取り巻く社会環境や市場ニーズが急速に変化している今、ブランドもその変化に応じた“再定義”が必要とされています。特に福岡のような地域密着型の経済圏では、地元の信頼を維持しながらも、時代に合った表現や伝え方が求められています。
ブランドは単なるロゴやスローガンではなく、企業の人格そのもの。だからこそ、変わりゆく環境の中で「何を守り、何を変えるべきか」を見極めることが、これからの経営において不可欠です。
企業を取り巻く環境変化とブランド資産のズレ
かつて有効だったブランドメッセージや表現が、今の市場では響かなくなってきている──そう感じる企業は少なくありません。たとえば、企業理念は変わっていなくても、顧客との接点や伝え方が時代に合っていないケースは多々あります。
デジタルシフト、世代交代、多様化する価値観──こうした環境変化が、ブランドの“ズレ”を引き起こす要因です。このズレを放置すれば、企業としての信頼性や一貫性が揺らぎかねません。
一方で、変化に合わせてブランドを見直すことで、新たな成長機会を生み出すこともできます。ブランド資産は“磨き直す”ことで価値を高め、時代に即した形で再定義することが可能なのです。
“変わらない強み”と“変えるべき表現”の見極め
リブランディングでは、過去の全てを否定する必要はありません。むしろ、企業の根幹にある「変わらない強み」を明確にし、それを時代に合った方法で“伝え直す”ことが重要です。
このとき、感覚的に変化を加えるのではなく、事業の根本に立ち返り「なぜこの事業をやっているのか」「誰のために価値を届けるのか」という本質的な問いに向き合う姿勢が求められます。
例えば、創業時から大切にしている“お客様との誠実な関係”という強みがあるならば、それを視覚的・言語的にどう表現すれば今の顧客に届くのかを考えるべきです。リブランディングとは、“何を変えるか”ではなく、“何を守るために変えるか”を設計する営みなのです。
リブランディングのステップと設計プロセス
ブランドを再定義するためには、感覚的な刷新ではなく、段階的かつ戦略的なプロセスが必要です。企業の本質を掘り下げ、社内外の視点からブランドの現在地を捉えなおすことで、“自社らしさ”を明確にし、未来に向けて一貫したブランド体験を設計することができます。このセクションでは、リブランディングを進めるための設計手順を順を追って解説します。
現状分析(PEST/3C/クロスSWOT)からの再出発
リブランディングの起点は、現状を正しく捉えることです。そのためには、マクロとミクロの両視点から自社を見直すフレームワークが有効です。
PEST分析では、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の外部要因を整理し、企業を取り巻く環境変化を客観視します。
3C分析では、Customer(顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の3つの視点から、自社の強みや競争優位性、機会を明確にします。
そしてクロスSWOTでは、内部要因(Strengths/Weaknesses)と外部要因(Opportunities/Threats)を掛け合わせ、ブランドの現状と課題を構造的に洗い出します。
こうした分析を通じて、企業の本質や社会からの認識とのズレを可視化し、「どこから再設計すべきか」の出発点を定めることができます。
ペルソナとブランド連想マップで“らしさ”を再設計
リブランディングの本質は「らしさ」の再定義にあります。そのためには、誰に対してどんな印象を与えたいのかを明確にする必要があります。ここで活用したいのが“ペルソナ設計”と“ブランド連想マップ”です。
ペルソナ設計では、理想の顧客像を具体的に描き出します。年齢や職業、価値観、ライフスタイル、情報収集手段などを細かく設定することで、「誰に響かせたいか」が明確になります。これにより、ターゲットに適したブランドの“語り方”を定めることができます。
一方のブランド連想マップでは、自社ブランドに対してユーザーや社内メンバーが抱く印象や連想語を可視化します。「安心感」「革新性」「親しみやすさ」など、ブランドが持つイメージを洗い出すことで、伝えるべき“感情の軸”が見えてきます。
この2つを掛け合わせることで、ペルソナの心に届く“らしさ”を言語化・視覚化できるようになり、後のステートメント作成やデザイン設計において一貫性のある判断軸を持つことができます。
ブランドステートメントから導く再定義の軸
ペルソナ設計とブランド連想マップによって「誰に、どんな印象を与えたいか」が明確になったら、それを言語化するステップに入ります。この時に不可欠なのが“ブランドステートメント”の策定です。
ブランドステートメントとは、企業の核となる価値観や約束を一文で示す宣言文のことです。「自社は何者で、何のために存在し、社会にどんな価値をもたらすのか」という問いに対する答えを、社内外の共通言語として提示するものです。
この文脈で重要なのは、理想論に終始せず、事業活動や顧客体験と結びつく“実感のある言葉”で構築することです。言い換えれば、ブランドの本質を“体温のある言葉”で定義すること。そこに、社内の意思統一や社外への信頼構築が生まれます。
さらにブランドステートメントは、4P(Product/Price/Place/Promotion)や4C(Customer value/Cost/Convenience/Communication)といったマーケティング視点とも連動させていく必要があります。ステートメントが描く価値観が、提供する商品や価格、流通チャネル、コミュニケーション手法にどう落とし込まれるかを具体的に設計することで、ブランド全体が統一された世界観をもつようになります。
これにより、単に印象を変えるだけの“表面的な刷新”ではなく、企業の軸から発想された“本質的な再定義”が可能となり、リブランディングの核となるストーリーを持つことができるのです。
社内浸透と外部発信のバランス設計
ブランドの再定義は、設計しただけでは機能しません。社内の共感と理解を得て初めて、企業全体としての一貫性ある行動が可能になります。同時に、その内側で育まれたブランドの意志や世界観を、外部にどう発信していくかも重要なテーマです。
このセクションでは「社内浸透」と「外部発信」を両輪として捉えたブランド定着のあり方を解説します。
社内への理解促進とカルチャー共有の方法
ブランドは経営層だけのものではなく、社員一人ひとりの行動に宿るものです。そのため、リブランディングの成功には“全社的な理解と共感”が不可欠です。
その第一歩が、ブランドステートメントの社内共有です。定期的な全体ミーティングやインナーブランディング用の動画コンテンツ、社内報などを通じて、ステートメントの背景や意図を丁寧に伝えていきます。
また、現場でブランドを体現するためには、社員自らがブランドを“自分ごと”として語れるようなワークショップや、職種ごとの実践ガイドを設けるのも効果的です。たとえば営業担当が提案資料でどうブランドを表現するか、カスタマーサポートがどんな言葉遣いをするかといった細部の設計も含めて、カルチャーの一貫性をつくっていきます。
社内がブランドに共感し、自発的に体現できる状態をつくることこそが、持続可能なブランド浸透の鍵となります。
対外的コミュニケーションと世界観の表現手段
一方で、外部に向けた発信では、ブランドの「印象づけ」と「信頼獲得」を両立させる戦略が求められます。ここで重要なのは、ロゴやWebデザインといった“視覚的要素”だけでなく、SNSや企業メディアでの“言語的表現”を含めて、トーン&マナーを整えることです。
たとえば、Webサイトにおいては、コピーライティング、写真のテイスト、色使い、余白の取り方までがブランドを物語ります。SNSでは投稿内容や返信の文体にも一貫性が必要です。「何を、どのように語るか」がブランドの信頼性を左右するからです。
また、リブランディングの初期には、“なぜ変わったのか”を丁寧に伝える特設コンテンツやプレスリリースを設けるのも有効です。変化の背景にある想いや戦略を開示することで、顧客や社会からの理解と共感を得やすくなります。
内と外、それぞれで誠実にブランドを語り、一貫した世界観を構築すること。それがリブランディング成功の土台になります。
リブランディングにおけるデザインの再構築
ブランドを“見える化”するうえで、デザインは欠かせない要素です。しかし、リブランディングにおけるデザインの役割は、単なる見た目の刷新ではありません。ブランドの価値観や方向性を的確に表現し、社内外に“共通の理解”をもたらす媒体としての役割を果たします。このセクションでは、視覚表現の再設計における重要ポイントを解説します。
ロゴ・カラー・書体の“再設計”と“再認識”
まず、視覚的に最も象徴的な要素となるロゴやカラー、タイポグラフィの再設計です。リブランディングの過程でブランドステートメントが明確になったら、それを視覚的にどう翻訳するかが鍵となります。
たとえば、誠実さや信頼性を打ち出すブランドでは、堅実なトーンのブルー系や、落ち着いたフォントを選ぶなど、ブランドが語る“人格”とデザインの整合性が問われます。一方、革新性や柔軟さを訴求したいブランドでは、曲線や余白の取り方、シンボルの可変性などが重視されることもあります。
注意すべきなのは、「過去の要素をすべて否定する必要はない」という点です。むしろ長年親しまれたアイデンティティの一部を継承しつつ、現在の価値観にフィットするように再解釈することが重要です。これは、既存顧客との信頼関係を維持しつつ、新しい価値を提示するうえで有効なアプローチです。
トーン&マナーのガイドラインでブレない表現へ
デザインにおける統一感を保つためには、トーン&マナー(T&M)のガイドライン整備が欠かせません。これはロゴの使用規定やカラーコード、写真のスタイルなど視覚面のルールだけでなく、コピーライティングや対応文の語調、フォーマル度合いまでを含む表現全体の設計指針です。
T&Mガイドがあることで、Web制作、広告出稿、営業資料、SNS投稿など、すべてのタッチポイントにおいてブランドの“世界観”を一貫して表現することが可能になります。特に社内外の複数部署や外部パートナーと協業する場面では、このガイドがブランドの“共通語”として機能します。
また、定期的な見直しや教育の場を設けることで、ルールが形骸化せず、日々の運用に活かされる仕組みを構築していくことが重要です。デザインのルールは縛るためのものではなく、“伝わり方”を整えるための支援ツール。ブレないブランドの構築には欠かせない基盤となります。
福岡企業がリブランディングで成功するために
リブランディングの成功は、単に良いデザインをつくることでも、企業理念を掲げることでもありません。それらをいかに「地域との接点の中で信頼に変えていくか」が、福岡というローカル市場では特に問われます。このセクションでは、福岡の企業がリブランディングを効果的に進めるための観点を解説します。
地域性と信頼性を両立させる発信とは
福岡は都市圏としての利便性と、地域密着型の文化が共存するユニークなエリアです。このバランス感覚は、ブランディングにおいても重要です。革新性ばかりを追いすぎると親しみや安心感を損ない、一方で従来の延長に留まると市場変化に遅れを取る──このジレンマを解く鍵が、“地域性”と“信頼性”を両立させた発信です。
たとえば、創業ストーリーや地元との関わりを丁寧に語るコンテンツは、企業の背景に共感を生みやすくします。また、福岡の特性を踏まえた言葉遣いやビジュアルをWebサイトや採用ページに取り入れることで、見込み顧客や求職者にとって“身近に感じられる存在”となります。
地元メディアとの連携や地域イベントへの参画など、オンラインとオフラインを横断する形でブランドを体験してもらう機会を増やすことも効果的です。リブランディングの目的が「再定義」である以上、地域との関係性の“語り直し”は欠かせません。
外部パートナーとの共創による成長支援
リブランディングのプロセスは広範であり、すべてを社内だけで完結するのは困難です。だからこそ、信頼できる外部パートナーとの共創が成果を左右します。
ブランディング支援のパートナーは、単なる制作会社ではなく、“企業の変化を伴走する戦略パートナー”であるべきです。ブランドステートメントの設計から、ペルソナ策定、Webサイトやツール制作まで一貫して支援できる存在は、意思決定の軸がブレることを防ぎます。
福岡のように地場密着型の企業が多い地域では、「土地勘」と「事業理解」をあわせ持ったパートナーが理想的です。単なる外注先ではなく、同じ視点でブランドの未来像を描いてくれる存在とともに、リブランディングは“点の刷新”から“線の成長”へと変わっていきます。
まとめ|リブランディングは“未来の共感”をつくる戦略
リブランディングとは、過去を否定する行為ではなく、これまで培ってきた価値を土台に、次のステージへと進むための“再定義”のプロセスです。ロゴやWebサイトといった見える部分だけでなく、ブランドの本質──すなわち「私たちは何者で、誰にどんな価値を届けたいのか」という問いへの答えを、社内外に一貫して届ける戦略的取り組みです。
特に福岡の企業においては、地域との結びつきや信頼関係がブランドの中核にあるからこそ、リブランディングの設計には“土地と人に根ざす視点”が求められます。表層の変更にとどまらず、組織の中から意味づけを見直し、デザインとストーリーでその思いを丁寧に届けていく。それが未来に共感をつくり出す、ブランド変革の本質です。
どんな企業にも、変化の節目は訪れます。そのときに“自分たちの軸”を明確に持ち、社内と外部の両方と対話できるブランドを再構築することこそが、競争ではなく共創の未来を切り拓く鍵となるのです。
ブランドデザインの基礎となる戦略部分から構築のお手伝いさせていただきます。
WRITER / demio 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 クリエイティブディレクター 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。 |