ロゴを変えるだけでは終わらない ブランドづくりの本質とは

福岡の企業がこれからの時代に選ばれ続けるためには、単に“目立つデザイン”や“おしゃれなロゴ”ではなく、“伝わるブランド”をつくることが求められます。その鍵を握るのが「ブランドトーン」です。ブランドトーンとは、言葉のニュアンスや視覚的な温度感など、あらゆるコミュニケーションに一貫した“空気感”をもたせるための設計です。
たとえば、同じ理念を掲げていたとしても、言い回しひとつ、色づかいひとつで受け取られ方は大きく変わります。つまり、ブランドの価値や想いを誤解なく、かつ共感を得ながら届けるためには、戦略的に整えられたトーンの存在が欠かせないのです。
ジャリアでは、クライアントのブランドデザイン支援において、単なるロゴの制作や装飾的なデザインにとどまらず、企業の“らしさ”を経営戦略に基づいて明確化し、ブランド体験全体へと展開することを大切にしています。その起点となるのが「ブランドステートメント」の策定です。
まずはPEST分析・3C分析・クロスSWOT分析などを通じて企業の現状を可視化し、ペルソナ設計や連想マップによって“自社らしさ”の方向性を定めます。そしてブランドステートメントを策定し、4P・4Cの観点で提供価値を再構築。そのうえでロゴ・カラー・書体などのブランド要素の設計、さらに社内外でのブランド体験の設計へと進みます。ブランドデザインとは「見た目を整えること」ではなく、「らしさを明文化し、正しく伝わる設計をつくること」だと私たちは考えます。
本記事では、福岡という地域性を活かしながら、企業のブランドトーンをどのように整え、言語・視覚の両面で“伝わるデザイン”へと落とし込んでいくのか、その実践的な視点をお届けします。
福岡の企業が持つ“らしさ”とは何か——。その問いに向き合うことから、ブランドトーン設計は始まります。
福岡は、地場のものづくり文化、地域との共生意識、そして柔軟なチャレンジ精神が入り混じる独自の土壌を持っています。たとえば、老舗とスタートアップが同居し、商人文化とコミュニティ志向が融合しているこの地域では、単なる“洗練されたトーン”よりも、誠実さや親しみ、真摯な姿勢といった感覚が強く求められる場面が多くあります。
このような背景のもとで、「どんな語調で語るか」「どんな温度感で表現するか」は、単なるスタイル選びではなく、企業の世界観を表現する本質的な問いとなります。企業の“らしさ”をトーンとして設計するには、まずその企業が何に価値を置き、誰に、どんな関係性で伝えたいのかを言語化し、次にそれをどんな雰囲気や佇まいで届けるのかを明確にする必要があります。
ジャリアでは、PESTや3C分析などで外部・内部環境を整理し、ブランド連想マップやペルソナ設計を通じて「感じてほしい印象」と「伝えたい価値」を明らかにした上で、その中核となるブランドステートメントを構築します。この言語化された“ブランドの軸”をもとに、ロゴやWebサイト、採用パンフレットなどに展開される一貫したトーン設計を行うのです。
福岡の企業にとっては、東京的な一方向の情報発信ではなく、双方向的な関係性のなかで生まれる“共感”を大切にするトーン設計こそが、選ばれるブランドを形づくる鍵となるのではないでしょうか。
福岡の文化的背景とブランド表現における影響
福岡という地域は、長い歴史と文化、そして人と人のつながりを重視する気質が根づいた土地です。たとえば、博多祇園山笠のように地域ぐるみで行われる伝統行事には、「協力」「誠実」「地元愛」といった価値観が濃縮されています。このような文化的背景は、企業のブランドにも大きな影響を与えます。
つまり、福岡で事業を営む企業にとって、共感・信頼・親近感といった要素を軸にしたブランドトーンは、自然な選択であると言えるでしょう。特に、福岡では“言い過ぎない”“控えめだけど芯がある”といった表現が好まれる傾向があり、過度にアグレッシブな語調よりも、温かく丁寧で率直なトーンが受け入れられやすいのです。
そのため、地域に根ざした企業が東京や海外のテンプレートを模倣するのではなく、自社の立ち位置や文化に寄り添ったトーン設計を行うことで、より深い共感と信頼を得ることが可能になります。
地域性と企業イメージのトーンの一致がもたらすもの
ブランドトーンが地域性と一致していると、顧客に対して“らしさ”が自然に伝わります。たとえば、福岡の地元食材を扱う飲食店が、「温かく迎え入れる」「地元の味を大切にする」という想いを、言葉選び・写真・カラー設計で丁寧に表現すれば、顧客は“地元に根ざしている”という信頼感を自然と抱くでしょう。
一方で、地域との親和性が薄いトーンを採用してしまうと、「なんとなく違和感がある」「よそよそしく感じる」といった感覚的ズレが生まれ、せっかくのブランドの魅力が届かないというリスクも生まれます。
つまり、トーン設計とは単なる“好み”や“雰囲気”ではなく、経営戦略の一環として地域や顧客の期待と合致するものに仕立てる必要があるのです。福岡に根差した企業にとって、このトーンの一致こそが、信頼構築・リピート・紹介といったブランド資産を形成する礎となります。
トーン設計の第一歩|言語の方向性をどう定めるか
ブランドトーンの構築において、最初に取り組むべきは「言語の方向性」の設計です。言葉は企業の思想や姿勢を最も繊細に表現するメディアであり、そのトーンが定まっていないと、どれほど優れたデザインや商品を用意しても、顧客の心には届きません。
ジャリアではまず、クライアントのブランドステートメントを軸に、「どう語るか」「どんな言葉で価値を伝えるか」を徹底的に考え抜きます。ステートメントに込めた価値観をどんな文体で、どのような語彙で届けるべきかを設計することが、このフェーズの目的です。
たとえば、同じ「誠実さ」というキーワードを伝えるにしても、「誠実に対応します」という言い方と、「真摯に、ていねいに、まっすぐに向き合います」という表現では、受け取る側の印象がまったく異なります。言葉は単なる情報伝達の手段ではなく、ブランドの“空気感”そのものを形づくる要素なのです。
ここでは、価値観の言語化と、文体・語彙の整え方に焦点を当て、ブランドのらしさを言葉でどう届けるかを解説していきます。
ブランドの価値観を「言葉」に変換するプロセス
企業のビジョンやミッション、サービスの特性は、しばしば抽象的な言葉で語られがちです。しかしブランドトーンの設計では、それを受け手にとって具体的かつ情緒的に伝わる言葉へと変換することが必要です。
ブランドステートメント策定のプロセスで「連想マップ」を活用し、企業の価値観や提供価値を中心に、関連するキーワードを自由に発散・整理していきます。この作業を通して、抽象的だった概念が徐々に“言葉の地図”として見える化されていきます。
そこから、もっとも共感性が高く、自社の価値を誤解なく伝えられる表現へと絞り込み、ブランドキーワードを抽出します。このキーワード群が、コピーや文章、タグラインなど、あらゆる言語表現の基盤となります。
企業メッセージに一貫性を与える文体と語彙の選定
言葉に含まれる“印象のトーン”は、文体や語彙によって大きく変化します。たとえば「~でございます」と「〜だよね」では敬語とフランクさのギャップが生まれ、それが企業のイメージに直結します。
トーン設計の一環として「語調レベル表」を用い、敬語・丁寧語・フランク語調などのレベルや語彙のトーンを可視化。ブランドごとに最適な語調の範囲を設定します。また、“業界用語”の使いすぎがブランドとの距離を生むケースもあるため、一般ユーザーにとって理解しやすい語彙へと置き換えるプロセスも大切にしています。
文体と語彙が整っていれば、Webサイト・パンフレット・SNSなど、異なる媒体でも“企業の人格”として一貫した印象を届けることができます。これは、信頼構築やファン化の第一歩となるブランドの基盤なのです。
視覚トーンの基本設計|色・書体・写真の印象操作
ブランドトーンを構成するもう一つの重要な要素が、視覚的な印象設計です。言葉のトーンが“中身”であるとすれば、色や書体、写真といった視覚要素は“雰囲気や温度感”を表現する装いのような存在です。
たとえば、誠実さを重視した企業であれば、落ち着いたブルー系のトーンや読みやすく品のある明朝体を用いることで、“まじめで信頼できる”という印象を伝えることができます。逆に、挑戦的で革新的なスタートアップであれば、コントラストの強い配色や大胆なタイポグラフィで、“勢い”や“前衛性”を強調する表現がふさわしいでしょう。
このように視覚的なトーン設計は、企業の性格やブランドの方向性に合わせて、感覚的なメッセージを視覚的に補強する役割を担っています。以下では、視覚トーン設計のなかでも特に重要な「カラー」「書体」「写真」の3つに焦点を当て、どのように設計すべきかを詳しく解説します。
カラー選定の心理効果とブランド性格のマッチング
色彩は人の感情に瞬時に作用する力を持っています。そのため、ブランドの性格に合ったカラーを選定することは、トーン設計のなかでも非常に重要なポイントです。
たとえば、安心感・信頼感を重視する金融系や医療系の企業では、ブルー系やグリーン系が選ばれる傾向があります。これはそれぞれ「誠実」「安全」「癒し」といった心理的連想があるためです。一方、飲食業や美容系では、レッド系やピンク系のように食欲や華やかさを連想させるカラーが有効な場面もあります。
企業のステートメントや提供価値とカラーの心理特性を照らし合わせ、「何色がブランドの人格にふさわしいか」を対話の中で丁寧に選定していきます。その結果として、ブランドイメージと色彩が一致することで、視覚から受ける印象に説得力が生まれます。
また、メインカラーに加え、サブカラーやアクセントカラーとのバランス設計を行うことで、トーンの幅を持たせながら一貫性を保つことも可能になります。
フォント・写真の表現で“温度感”を調整する
視覚トーンにおいて、書体や写真の選び方もまた、受け手に対する“温度感”を大きく左右する要素です。
書体は、その形状によって企業の印象を大きく変えます。たとえば、明朝体は「落ち着き」「伝統」「品格」といった印象を与えやすく、ゴシック体は「モダン」「堅実」「力強さ」を感じさせる傾向にあります。さらに丸ゴシックや手書き風フォントを用いれば、「親しみやすさ」や「柔らかさ」といった印象を生むこともできます。
一方、写真は「どんな瞬間を切り取るか」「どんな色調・構図で撮影するか」によって、感情への訴求力が大きく変化します。たとえば、社員の働く姿を自然光のもとで撮影すれば、あたたかみのある信頼感を伝えることができ、シャープな光と陰影で撮った製品写真は、スタイリッシュで高品質な印象を与えます。
企業のトーンに合ったフォントと写真素材を選定し、Webサイトやパンフレットなどのデザイン要素として一貫した印象づくりを行っています。こうした視覚的トーン設計は、ブランド全体の“空気感”を決定づける鍵となるのです。
トーン&マナーガイドの策定と運用
ブランドトーンを継続的かつ一貫性を持って発信し続けるためには、属人的な運用ではなく、明文化されたルール=「トーン&マナーガイド」の策定が不可欠です。どれほど優れたトーン設計を行っても、それが組織内で共有されず、媒体ごとにトーンがぶれてしまっては、顧客に与えるブランド体験が分断されてしまいます。
特に福岡の企業においては、現場主導での広報や採用活動が多く、部署ごとに表現のばらつきが出やすい傾向があります。そうした中で、社内外のすべての発信においてトーンを統一するためには、「どのような語調・表現を使うのか」「どんなデザイン・レイアウトを守るのか」といった指針を明文化し、誰もが参照できる状態にしておくことが大切です。
以下では、ジャリアが実際に企業ブランディング支援を行う中で活用している、トーン&マナーガイドの作り方と、福岡の中小企業でも運用しやすい体制構築のヒントを紹介します。
社内外で一貫性を保つためのルール作成方法
トーン&マナーガイドを作成する際には、「ことば」「デザイン」「使用シーン」の3つの要素に分けて整理することが有効です。
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ことば(言語トーン):語調のレベル、よく使う表現・避けるべき表現、タグラインやメッセージ例などを明示
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デザイン(視覚トーン):ロゴの使い方、カラーコード、書体の指定、写真のトーン・構図指針など
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使用シーン(運用方針):Web、SNS、名刺、パンフレットなど媒体ごとの活用例と注意点
ジャリアでは、実際のアウトプット事例をガイド内に掲載し、「NGパターンとの比較」や「理想的な事例」を明示することで、感覚的なルールを誰でも理解できる形に落とし込みます。これにより、広報や営業、採用など複数の部門が関与する場面でも、トーンを崩すことなく顧客に届けられるようになります。
福岡の企業が自走できるトーン設計の体制構築
トーン&マナーガイドを作った後に重要なのが、それを“現場で活用できる体制”の整備です。ガイドを作成しただけで終わってしまっては意味がなく、全社で共通認識として浸透させる工夫が求められます。
トーン設計後のフェーズで「ブランドアンバサダー制度」や「表現統一のチェックリスト」などを提案し、運用の仕組みまで一体的に設計します。たとえば、月に一度ブランド表現の振り返り会を実施する、各部門に1名ずつ表現担当を設ける、など小さな取り組みから始めることが、長期的なブランド浸透につながります。
また、福岡の中小企業のようにリソースが限られている場合でも、「簡易版ガイド」からスタートし、段階的に拡張していく設計も可能です。必要なのは完璧なルールブックではなく、共通の“ブランドの物差し”を持つこと。それが、持続可能で自走できるブランディングの礎となります。
ブランドトーンのズレがもたらすリスクと改善例
ブランドトーンは、企業の第一印象から長期的な信頼形成までを左右する“無言のメッセージ”です。したがって、トーンに一貫性がなかったり、設計と実際の表現がズレてしまったりすると、顧客に誤解や不信感を与えかねません。
特に、複数の部門や外部パートナーが関わる企業では、媒体や場面によって表現が変わりやすく、意図しない「ブレ」が生じることがあります。たとえば、採用ページでは親しみやすい表現を使っているのに、会社案内パンフレットでは堅苦しい言葉づかいになっている――こうした違和感は、求職者や取引先に“二面性”を感じさせる要因になります。
ここでは、トーンのズレによってどのようなリスクが生じるのか、また実際に改善に取り組んだ例とともに解説していきます。
トーンが統一されていないことで起きる誤解・機会損失
ブランドトーンがばらついていると、以下のような問題が発生することがあります:
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顧客が「企業の人格」を捉えきれず、信頼を持てない
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表現がバラバラで、“ブランドっぽさ”が醸成されない
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広報・採用・営業など、目的ごとの訴求にズレが生じる
結果として、「あの会社って、結局何が強みなの?」「見た目は良いけど、中身がよくわからない」といった印象を与え、せっかくのブランド価値が正しく伝わらない事態に陥ってしまいます。
こうしたリスクを回避するには、表現のルールやトーンを定義し、それを全社で共有・運用することが重要です。特に福岡の企業では、営業や現場スタッフが顧客と密に接する分、口頭や文書での“語り口”のズレが信頼関係に直結しやすいため、トーン統一の重要性はより高いといえるでしょう。
自社ツールを点検するためのチェック観点
トーンのズレを発見するためには、まず自社のすべてのコミュニケーションツールを俯瞰し、以下の観点で点検することが有効です:
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同じ理念を表現する文章が、媒体ごとに語調や語彙が異なっていないか?
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使用している写真のトーンや構図が統一されているか?
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ロゴやカラールールが資料・媒体ごとに崩れていないか?
ジャリアでは、ブランド表現を棚卸し・可視化する「ブランド点検シート」を用いて、トーンのブレを定量的に洗い出す支援を行っています。これにより、感覚的だった“違和感”を課題として明確化し、優先順位を付けた改善が可能になります。
トーンの一貫性が保たれることで、顧客との接点すべてが「ブランド体験」となり、信頼・共感・ファン化へとつながっていきます。
顧客の“共感”を得るためのトーン最適化の実践方法
ブランドトーンの本質的な役割は、「伝える」ことではなく「伝わる」ことにあります。つまり、企業の想いが一方的に発信されるだけでなく、受け手である顧客が“共感し、自分ごと化できる”状態へと導くことが、真のブランディング成功といえるのです。
そのためには、顧客の価値観や行動ステージに応じてトーンを最適化し、「誰に・いつ・どんな空気感で」伝えるのかを設計する視点が欠かせません。ここでは、ペルソナごとの表現設計や、顧客接点ごとのトーンコントロールの実践方法を解説します。
ペルソナごとのトーン調整
すべての顧客に対して“ひとつのトーン”だけで伝え続けるのは、かえってブランドの距離感を生んでしまう可能性があります。たとえば、BtoB企業においては「経営者」「広報担当」「現場責任者」など、情報の受け取り方や関心領域が異なる複数のペルソナが存在します。
各ペルソナの思考特性や意思決定の動機を可視化したうえで、それぞれに響く語調や情報の順序、表現の深度を調整しています。経営層には理念や戦略性を重視した言葉を、広報担当者には実行フェーズの利便性や実績を訴求する――といった具合に、同じブランドメッセージを複数の“伝え方”で最適化するのです。
このような表現のバリエーションは、トーン設計に「幅」をもたせながらも、「芯」はぶらさないという高度なバランス感覚が求められます。
ステージ別の表現切り替え(認知・比較・採用など)
顧客との関係性は、接点のステージによって変化します。たとえば、まだブランドを知らない“認知”段階では、印象に残る表現や親しみやすさを重視し、比較・検討段階では機能や具体的なメリットが伝わるトーンが求められます。
また、採用活動においては企業文化への共感を促すような語り口が効果的です。こうした段階的な表現切り替えは、「どこで・誰が・何を目的に読むのか」を逆算してトーンを調整する思考が必要になります。
ジャリアでは、顧客接点のジャーニーマップをもとに、接点ごとの言葉選びやデザイン演出のガイドラインを設計し、全体を貫くトーンの中にも“場面に応じた最適化”を組み込んでいます。
結果として、どのタイミングでもブランドとの接触が心地よく、違和感のない“なめらかな体験”として顧客の記憶に残るのです。
トーン設計に役立つテンプレートとフレームワーク
ブランドトーンの設計には、感覚やセンスだけでなく、論理的に思考を整理し、チーム内で共通認識を持つための「見える化」が欠かせません。その際に有効なのが、テンプレートやフレームワークの活用です。
ジャリアでは、ブランド構築を支援する中で「トーン設計マトリクス」や「語調可視化シート」などのフレームを用いて、企業が自らの言葉やデザインを俯瞰し、整理・選択できる仕組みを提供しています。
これらのツールを使うことで、社内の関係者間でも「この表現はうちのブランドらしいか?」を客観的に判断しやすくなり、属人化の防止や発信の精度向上につながります。
トーン設計マトリクスの活用法
トーン設計マトリクスとは、「語調のフォーマルさ(硬⇔柔)」と「印象の温度感(冷⇔温)」を縦横の軸に設定し、自社が目指すべき言語・視覚トーンの方向性をマッピングするフレームです。
このマトリクスを使うことで、「うちは親しみやすいけど、決して砕けすぎない位置を目指そう」など、トーンの微細なニュアンスをチーム内で共有できます。また、競合他社や理想ブランドのポジショニングを比較することで、自社らしさがより鮮明になります。
実際のプロジェクトでは、ヒアリング内容をもとに複数のトーン候補をプロットし、言語・デザインの具体化に向けた出発点として活用しています。
語調・表現レベルの可視化シート
ブランドトーンの“語調”を設計するうえで、語彙や表現のレベルを具体的に整理した「語調可視化シート」も有効です。
このシートでは、同じ意味をもつ複数の表現を「硬い⇔柔らかい」「日常的⇔専門的」といった指標で分類し、どのトーンが自社に合っているかを選択・検討できるようにしています。
たとえば、「対応いたします」「ご対応させていただきます」「すぐに対応しますね」など、言葉ひとつでも受け手に与える印象が変わることを、視覚的に理解できるように整理します。
こうした可視化の取り組みは、外部パートナーとの表現調整や、社内での教育ツールとしても活用しやすく、長期的なブランド運用の礎となります。
まとめ|福岡のブランドは“共感される言葉と空気感”で決まる
ブランドデザインの本質は、“目に見えるもの”だけではありません。ロゴやカラーといった視覚的な要素は、あくまで「らしさ」を伝える手段のひとつに過ぎず、その背後には必ず、企業の価値観や想い、社会との関わり方が存在しています。
福岡という地域でビジネスを展開する企業にとって、地元との結びつきや人との関係性の濃さは、大きなブランド資産です。その“らしさ”を伝えるためには、言葉の温度感や表現のバランス、トーンの一貫性が何よりも重要になります。
ジャリアでは、単なるデザイン制作にとどまらず、企業の内側からブランドを整え、その“空気感”をあらゆる接点に行き渡らせるブランディング支援を行っています。ブランドステートメントの策定から、トーン&マナーガイドの整備、社内外での運用体制づくりまで――すべては「伝わるブランド」を実現するための道筋です。
自社らしさを言葉とデザインで丁寧に形にし、共感と信頼を育む。その積み重ねが、これからの福岡の企業にとって最も持続可能で競争力のあるブランディングの在り方だと、私たちは考えています。
ブランドデザインの基礎となる戦略部分から構築のお手伝いさせていただきます。
WRITER / ANNO 株式会社ジャリア福岡本社 第3営業部 ブランディングデザインチーム 株式会社ジャリア福岡本社 第3営業部 ブランディングデザインチームは、ジャリアの中でもブランド構築などブランディングに特化したチームです。企業のブランドはもちろん、採用関連も含め、ブランディングを軸に動画やWebサイト設計、パンフレットなど様々なツールの制作、広告代理店だからできる設計するだけで終わらない伴走しながらブランド再生と再認を作り上げるためにクライアントのブランドアイデンティティとブランドイメージの一致を目指し、日々活動しています。 |