韓国動画広告とOOHの最新トレンド|YouTubeやTikTok・デジタルOOHの活用法と費用対効果
韓国市場におけるデジタル広告は、いま大きな転換期を迎えています。かつてはNAVERやKakaoを中心とした検索・メッセンジャー広告が主流でしたが、近年は「動画 × 体験」を軸にした広告消費が急速に拡大。特にZ世代・α世代を中心に、YouTube・TikTok・Instagram Reelsなどのショート動画を通じて商品やブランドに触れる機会が圧倒的に増えています。
さらに、韓国ではオンライン広告と並行して、デジタルOOH(Digital Out-of-Home)、いわゆる街頭ビジョンや交通広告が、SNS拡散を前提とした“体験型メディア”として再評価されています。明洞・弘大・江南といった主要エリアでは、LEDビジョンを活用したセンイル広告(応援広告)やブランドキャンペーンが日常的に展開され、「街の風景そのものがSNSコンテンツ化する」という現象が広がっています。
こうした潮流の中で、動画広告とOOHは単なる“認知手段”ではなく、オンラインとオフラインを横断するブランド体験の設計ツールへと進化していると言えます。
動画で感情を動かし、OOHでリアルな接触体験を生むという“感情 × 体験”の組み合わせこそ、韓国広告市場における次世代の成功パターンです。
本記事では、
- 韓国における動画消費の最新データ
- YouTube・TikTokなど主要プラットフォームの広告費用と効果
- 街頭ビジョンを中心としたデジタルOOHの進化と費用レンジ
- 動画とOOHを連携させたO2O戦略
を体系的に解説します。
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目次 |
韓国における動画コンテンツ消費の現状と広告機会
韓国は、アジアの中でも最も動画コンテンツの消費量が多い国の一つです。特にモバイル利用率が高く、通信インフラ(5G)の普及も世界最速で進んだことから、常時接続・常時視聴の文化が完全に定着しています。
Z世代・α世代を中心に“ショート動画ファースト”が加速
近年のトレンドを牽引しているのは、やはりZ世代(10〜20代前半)とα世代(10歳未満)です。彼らは検索よりも先に動画で情報を得る傾向が強く、GoogleではなくYouTubeで検索するという行動様式が一般化しています。
韓国の調査機関「DMC Report」によると、Z世代の動画視聴時間は、かなり長い傾向にあり、SNSよりも動画プラットフォームへの滞在時間が長いという結果が出ています。特に人気の高いアプリは以下の通りです。
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プラットフォーム |
月間アクティブユーザー(推定) |
主な特徴 |
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YouTube |
約4,500万人 |
世代・地域を問わず最も視聴時間が長い。教育・エンタメ・Vlogが中心。 |
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TikTok |
約700万人 |
10〜20代が中心。トレンド消費・購買行動への影響力が強い。 |
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Instagram Reels |
約数百万人 |
ファッション・美容・ライフスタイル系ブランドとの親和性が高い。 |
YouTubeとTikTokの2強構造が続く一方で、Reelsが急速に追い上げており、韓国の消費者は「1日複数の動画アプリを使い分ける」行動パターンを見せています。
ブランドにとって重要なのは、“動画が検索を置き換えつつある”という現実です。たとえば、コスメやカフェを探す際に「NAVERで調べる」よりも、「TikTokでレビュー動画を見る」ユーザーが増加。視聴がそのまま購買へと直結するケースも珍しくありません。
“視聴”から“参加”へ|ユーザー主導の動画体験
韓国では、動画広告の形も「一方的に見せる」から「共に作る」方向へシフトしています。TikTokのハッシュタグチャレンジやYouTube Shortsでのコラボ動画など、視聴者が“参加者”になる仕組みが広く受け入れられています。
特に2024年以降、韓国の大手ブランドや官公庁キャンペーンでは、「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」を活用した動画施策が急増。たとえば化粧品ブランドでは、ユーザーが自分の“使用動画”を投稿することでクーポンがもらえるキャンペーンが定番化しています。
この仕組みにより、広告がSNS上で自然拡散し、CPA(1獲得単価)を30〜50%削減する事例も報告されています。
また、YouTubeライブやInstagramライブを活用した「ライブコマース」も定着。リアルタイムで商品説明・質問対応を行うことで、視聴者の購入率が通常のECの約3倍に達するケースもあります。動画広告が「情報提供の手段」から「購買体験の場」へと進化しているのが、韓国市場の最大の特徴です。
韓国の動画広告市場規模と今後の成長予測
韓国の動画広告市場は、加速度的に成長しています。特にモバイル動画広告が全体の8割を占め、企業の広告予算配分でも動画へのシフトが加速中です。
市場調査によると、2025年には
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YouTube広告:約45%
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TikTok・Instagram Reelsなどショート動画広告:約35%
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その他(OTT・SNSなど):約20%
という構成比になると予測されています。
この背景には、
- 5G通信の高速化と大容量プランの普及
- Z世代中心の動画ネイティブ文化
- ブランドの“ストーリーテリング重視”への転換
という3つの要因があります。つまり、韓国市場では「静止画広告では感情を動かせない」時代に突入しており、今後の広告戦略では“動画を軸に、OOHやSNSをどう連動させるか”が競争力の鍵となります。
主要動画プラットフォームの広告戦略と費用体系
韓国における動画広告市場は、YouTubeとTikTokの2強体制を軸に動いています。しかし、両者の広告ロジックやユーザー心理は大きく異なり、同じ動画でも「刺さり方」が全く違います。ここでは、それぞれのプラットフォームの特徴・広告メニュー・費用相場・成功のポイントを整理していきます。
YouTube広告(TrueView・Bumper Ads)の最適化と課金形態
韓国で最も利用率が高い動画プラットフォームであるYouTubeは、Z世代だけでなく30〜50代の利用率も高く、年齢層が最も広いメディアです。教育・エンタメ・レビュー・ASMR・ニュースなど、多様なカテゴリーに広告を展開できる点が強みです。
YouTube広告には主に以下の3つのフォーマットがあります。
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広告タイプ |
特徴 |
費用体系 |
平均相場 |
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TrueView(スキップ可能広告) |
5秒後にスキップ可能。視聴完了やクリックで課金 |
CPV(1視聴課金) |
推定約5〜15ウォン/1視聴(約0.5〜1.5円) |
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Bumper Ads(6秒スキップ不可) |
短尺認知用。ブランディング向き |
CPM(1,000回表示課金) |
推定約4,000〜6,000ウォン(約480〜720円) |
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TrueView for Action |
CTAボタン付き。購買・登録に直結 |
CPAまたはCPV |
推定成果型でCPC換算約150〜400ウォン(約18〜48円) |
韓国では「ブランド動画の再生率」よりも、「視聴後の検索行動」を重視する傾向があります。たとえば、YouTube広告を見た直後にNAVERでブランド名を検索するユーザーが多く、“動画広告→NAVER検索→購買”という連携構造ができています。
そのため、動画内でブランド名を明示する構成(3秒以内に露出)が重要です。また、韓国語字幕の自然さやスピード感も成果を左右します。韓国では平均的に視聴速度が1.25〜1.5倍設定されているため、テンポの速い編集が高いCTRにつながります。平均相場はあくまでも推定としての数値として把握しておいてください。
TikTok広告のショートフォーム戦略と費用
TikTokは10〜20代を中心に、韓国でも“トレンドの発信源”として圧倒的な影響力を持っています。単なる娯楽ではなく、ファッション・コスメ・グルメなどの「購買前情報源」として活用されるのが特徴です。
韓国におけるTikTok広告の主なメニューは次の3つです。
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広告タイプ |
特徴 |
費用体系 |
平均相場 |
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In-Feed Ads(インフィード広告) |
通常投稿の間に表示されるネイティブ動画広告 |
CPC/CPV |
推定クリック単価 約100〜300ウォン(約12〜36円) |
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TopView Ads |
アプリ起動時に全画面表示。高い認知効果 |
CPM |
推定約15,000〜25,000ウォン(約1,800〜3,000円) |
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Hashtag Challenge |
ユーザー参加型の動画投稿キャンペーン |
パッケージ費用制 |
推定1キャンペーン約5,000万〜1億ウォン(約600万〜1,200万円) |
TikTok広告の成功ポイントは、「広告らしく見せないこと」。特に韓国では「トレンド × 共感 × ユーモア」が三大要素とされ、インフルエンサーや一般ユーザーを巻き込んでUGC(ユーザー生成コンテンツ)を大量に生む設計が成果を左右します。
また、TikTokのアルゴリズムは視聴維持率を最重視するため、冒頭2秒でフックを作る構成が必須です。「驚き・共感・笑い・変化」など、感情を動かすカットを最初に配置し、続く5〜10秒でブランドメッセージを自然に挿入するのが最も効果的です。
加えて、韓国ではTikTokとInstagram Reelsの連携投稿(同一素材を両方で配信)が一般的になっており、1素材で2倍のリーチを取るクロスメディア戦略が主流です。
デジタルOOH(DOOH)への進化と活用法
韓国では、街頭広告(OOH:Out-of-Home Advertising)が急速に「デジタルOOH(DOOH)」へと進化しています。従来の看板広告や地下鉄ポスターに代わり、LEDビジョン・大型スクリーン・交通広告などに動画コンテンツを配信する手法が主流となり、オンライン広告との境界が限りなく曖昧になりつつあります。
特に、明洞(ミョンドン)・弘大(ホンデ)・江南(カンナム)といった主要エリアでは、広告が単なる掲示ではなく“体験型のメディアコンテンツ”として機能。SNSでの拡散を狙った「センイル広告(応援広告)」やブランドイベント型のOOHが街中に溢れています。
ここでは、韓国のデジタルOOHを活用する際に押さえておくべき費用感と、オンライン広告との統合的な戦略を解説します。
街頭ビジョン・大型LEDビジョンのインパクトと費用レンジ
韓国のOOH市場の中核を占めるのが、大型LEDビジョンを中心としたデジタルサイネージ広告です。ソウル中心部では、主要駅・交差点・ショッピングモール・大学街などに巨大スクリーンが多数設置されており、映像・音声・ARエフェクトなどを組み合わせた立体的な演出も増えています。
特に注目されているのが、以下のエリアと媒体です。
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エリア |
主な媒体 |
特徴 |
費用目安 |
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明洞(Myeongdong) |
明洞メインストリート大型ビジョン |
外国人観光客・若年層の通行量が多い |
1週間 300〜600万ウォン(約36〜72万円) |
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弘大(Hongdae) |
クラブ通り・駅前LEDビジョン |
音楽・ファッションブランドに人気 |
1週間 200〜400万ウォン(約24〜48万円) |
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江南(Gangnam) |
COEX・テヘラン路スクリーン |
高級・企業系ブランドの露出に最適 |
1週間 500〜1,000万ウォン(約60〜120万円) |
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地下鉄・バス内 |
首都圏主要路線・駅構内 |
通勤者向け・反復訴求に効果的 |
1週間 100〜300万ウォン(約12〜36万円) |
OOH広告の費用は掲載期間や再生頻度によって変動しますが、「1日10〜15秒×20回表示」で10万〜20万ウォン/日(約1.2〜2.4万円)」が一般的なレンジです。特にデジタルOOHは静止画ではなく動画再生が可能なため、YouTubeやTikTokで使用した素材を再利用でき、制作コストを抑えながらマルチチャンネル展開を実現できます。
韓国のOOHは単なる“屋外掲示”ではなく、SNSとの連携が前提です。通行人が広告を撮影・投稿する「UGC連鎖」を狙い、QRコード・NFC・ハッシュタグを組み合わせた体験型OOHがトレンドとなっています。
OOHとデジタル広告の連携戦略(O2O施策)
OOH単体での認知獲得に加え、韓国ではオンライン広告と組み合わせたO2O(Online to Offline)施策が主流になっています。街頭広告を見たユーザーがその場でスマートフォンを通じて情報にアクセスし、SNSで共有・購買へつなげる一連の流れが設計されています。代表的な連携パターンとしては次の3つがあります。
1. OOH × SNS拡散キャンペーン
- ビジョンにハッシュタグやQRコードを掲載し、投稿したユーザーにクーポンを付与。
- 例:#〇〇チャレンジ #KPOP応援広告 など。
- 広告費に対してSNS波及効果(インプレッション×5〜10倍)を生む事例も。
2. OOH × 動画広告のシナジー配信
- YouTube・TikTokで配信した動画素材をそのまま街頭ビジョンへ。
- 「街で見た広告をYouTubeでも見る」ことで視認性と記憶定着率が向上。
- 特に韓国では“二重接触(dual exposure)”がCTRを平均20〜30%押し上げるとされています。
3. OOH × 店舗誘導(位置情報連携)
- KakaoMapやNAVER Mapと連携し、OOH視認後の位置データを分析。
- 近隣の実店舗広告やイベント誘導に接続するO2O型プロモーションが一般化。
- 飲食・美容・ファッションなどローカルビジネスとの親和性が高い分野です。
OOHとデジタル広告の統合運用を行うことで、「オンラインで認知 → オフラインで体験 → 再びオンラインで拡散」という循環型マーケティングを構築できます。特に、NAVER検索広告やKakao Momentとのデータ連携を組み合わせると、OOH接触ユーザーへのリターゲティング配信も可能になり、認知から購買までを一気通貫で可視化できるのが強みです。
まとめ
韓国の広告市場は、検索広告中心の時代から「動画 × 体験」へと大きくシフトしています。YouTubeやTikTokなどのショート動画プラットフォームは、もはや単なる情報発信の場ではなく、購買行動の起点として機能し、消費者の感情と行動を同時に動かす存在となりました。
一方で、街頭ビジョンや地下鉄・交通広告といったOOHも、デジタル技術によって再び注目を集めています。SNS連携やQRコード活用により、かつて“測定が難しい”とされた屋外広告が、オンラインと同等の効果測定を実現。オンラインとオフラインの境界を超えたO2Oマーケティングが一般化しつつあります。
このように韓国では、動画広告とOOHを組み合わせた「感情と体験を掛け合わせる設計」が、次世代マーケティングの中心軸となっています。単なる視聴率やクリック率を追うのではなく、“ユーザーの記憶に残る瞬間をどう作るか”を基点に戦略を描くこと。それこそが、韓国市場でブランドが支持を得続けるための最も重要な成功要因といえるでしょう。

| WRITER / demio 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 クリエイティブディレクター 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。 |
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