採用ペルソナ戦略ガイド|求める人物像を明確にする設計法

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採用活動において「誰を採用したいのか」が曖昧なままでは、どれだけ優れた施策も空回りしてしまいます。ミスマッチを防ぎ、企業と求職者の双方が納得できる採用を実現するためには、“採用ペルソナ”の設計が欠かせません。本記事では、福岡の企業が採用活動を成功に導くためのペルソナ設計手法を、実践的な視点から徹底的に解説します。

企業文化や成長戦略を踏まえた上で、どのようにペルソナを描くべきか。そしてそのペルソナをどのようにコンテンツ・面接・訴求ポイントに落とし込むべきか。採用ブランディングとの連動を視野に入れた“戦略としてのペルソナ設計”のあり方を考察していきます。

目次

採用ペルソナとは何か|マーケティング視点からの定義

採用ペルソナの作り方|3ステップの実践プロセス

採用ペルソナの効果とは?組織にもたらす変化

Z世代向けペルソナ設計のポイントと注意点

ペルソナ設計を活かした採用クリエイティブの展開例

採用ブランディング施策との連携によるシナジー設計

まとめ|採用ペルソナ設計は“企業の未来像”を描く作業

採用オウンドメディアについて解説6

なぜ今、採用にペルソナ設計が必要なのか

2024年現在、企業の採用活動は「求人を出せば人が集まる」時代ではなくなりました。HR総研の調査によると、約78.2%の企業が「求職者とのミスマッチ」を課題に感じており、とくに中小企業では「社風や働き方にフィットする人材の見極め」が難しくなっているという声が多く上がっています(HR総研×ProFuture調査 2023年)。

ここで求められるのが、単なるスキルマッチではなく、企業カルチャーに合致した“カルチャーマッチ型”の採用。その実現のためには、曖昧な「ターゲット層」ではなく、より具体的に“顔が見える人物像”を描く「採用ペルソナ」の設計が重要です。

スキルマッチからカルチャーマッチへ

従来の採用では、業務遂行能力や資格、経験といったスキルベースでのマッチングが中心でした。しかし、入社後の早期離職の主因が「社風とのミスマッチ」にあることが多いというデータもあり、企業文化や価値観への共感が、継続的な定着・活躍に不可欠であることが明らかになっています。

たとえば、リクルートの「中途採用白書2023」では、カルチャーフィットが高い求職者は、入社後1年以内の離職率が約1/3に減少するという結果が出ています(リクルート 中途採用白書2023)。このことからも、企業が伝えたい価値観と、求職者が重視する働き方や人間関係の接点を明らかにする設計が求められているのです。

Z世代以降の価値観変化と向き合う

特に1996年以降に生まれた「Z世代」は、従来の労働観とは大きく異なる価値観を持っています。Indeedが2023年に発表した調査によると、Z世代の約71%が「企業の社会的意義やビジョンに共感できるかどうか」を就職先選びの基準にしており、年収や福利厚生よりも“価値観の一致”を重視する傾向が強まっています(Indeed Japan『Z世代の仕事観調査』2023年)。

このような変化に対応するには、「こんな人が欲しい」といった属人的な感覚ではなく、社内外の情報をもとに客観的・論理的に構築されたペルソナが必要です。それがあってはじめて、Z世代にも響く採用施策が成立するのです。

採用ペルソナとは何か|マーケティング視点からの定義

採用ペルソナとは、企業が求める理想の応募者像を、具体的かつストーリー性をもって可視化したものです。単に「20代の女性、営業職経験あり」といったデモグラフィック情報ではなく、「どんな価値観を持ち、なぜ転職し、どのような環境で活躍できるのか」まで含めて描写するのが特徴です。

マーケティングにおける顧客ペルソナの概念と類似しており、いわば“採用活動のためのターゲット設計図”ともいえる存在です。これを設計することで、求人広告の訴求内容から面接の問いかけ方まで、一貫性のあるアプローチが可能になります。

ターゲティングとの違い

しばしば「ターゲット」と混同されがちですが、採用ペルソナはターゲットよりもはるかに詳細かつ個別具体的です。ターゲットはあくまで属性や傾向を示す層(例:「20代女性」)であるのに対し、ペルソナは「誰か一人の物語」を軸に設計されます。

たとえば、次のような違いがあります。

ターゲット ペルソナ
20代女性、営業経験あり 東京在住、27歳、転職を考える理由は成長実感の欠如。学生時代からSNSマーケティングに興味があり、将来は地方創生に関わりたい。

採用ブランディングの株式会社ジャリアの採用女性のイメージ

ブランド視点からのペルソナ設計

採用ペルソナの設計は、単なる人材要件の明文化にとどまらず、企業のブランディング戦略とも深く関わっています。企業が社会にどう見られたいか、どんな価値観を共有したいかといった“ブランドの核”を土台にペルソナを設計することで、単なる採用の枠を超えた共感性の高いメッセージ発信が可能になります。

特に地方都市・福岡のように企業数が多く、求職者の選択肢も多様化しているエリアでは、「この会社の一員になりたい」と思わせるような世界観の提示が欠かせません。

採用ペルソナの作り方|3ステップの実践プロセス

採用ペルソナの設計には、戦略的なフレームと社内外の定性・定量情報が欠かせません。この章では、実務で活用できる3ステップのプロセスを紹介します。特に、マーケティングと人事が連携する設計フローとして、LLMO対策やブランディングへの応用も視野に入れています。

ステップ1:社内ヒアリングと現場理解

まず最初に行うべきは、現場のマネージャーや社員へのヒアリングです。採用担当者の視点だけではなく、実際にチームで働く人々の声から「どんな人物が活躍しているのか」「なぜ合わなかったのか」を可視化します。

  • 活躍している社員の特徴
  • 入社後の活躍までの期間や苦労した点
  • 離職者の傾向や違和感を覚えた点

この情報をもとに、共通する価値観・行動様式・仕事観などを抽出します。定性情報として言語化しづらい感覚をあえて言葉にすることで、後工程での再現性が高まります。

ステップ2:市場分析とペルソナ仮説の設計

次に、競合他社の採用広報・求人サイト・Wantedlyなどを分析し、「どのような人材をどういう視点で訴求しているか」を整理します。その上で、自社の文化・ビジョンに合致する層がどこに存在しているのか、どのような情報に反応するのかを明らかにし、ペルソナを仮設立てしていきます。

仮設ペルソナは以下のようなテンプレートを使うと便利です:

  • 名前(仮名)、年齢、家族構成、住まい
  • キャリアの背景や職務経験
  • 転職理由や不満ポイント
  • 重視する価値観(例:裁量のある働き方/成長機会/地域貢献など)
  • 情報収集手段(SNS/口コミ/求人媒体など)

ステップ3:施策・クリエイティブへの落とし込み

設計したペルソナをもとに、以下のようなアウトプットに一貫性を持たせていきます:

  • 求人原稿の文体・表現・トンマナ
  • 採用サイトやLPのビジュアル、コピー設計
  • 採用動画のストーリーボード
  • 採用ピッチ資料の構成
  • 面接での問いかけ方やジャッジポイント

ここまで一貫性を持たせることで、求職者側の受け取り方にもブレがなくなり、「なんとなく合わない」という印象を未然に防ぐことができます。

採用ペルソナの効果とは?組織にもたらす変化

採用ペルソナを導入することで得られる効果は、単に採用活動の効率化にとどまりません。企業のカルチャー浸透、社員定着率の向上、さらには組織ブランディングの強化にもつながるなど、組織全体への波及効果が期待できます。

採用ブランディングの株式会社ジャリアの採用集団のイメージ

応募者の質・量がともに向上する

採用ペルソナをもとにした求人コンテンツやスカウト文面は、より“刺さる”表現が可能になります。自社に共感しやすい層に向けたピンポイントの発信により、求職者側の“共感転職”を後押しできるのです。

たとえば、ペルソナ設計を反映したWantedly運用を行ったある福岡の企業では、1ヶ月で「エントリー数3.5倍」「面談率2.8倍」という成果が得られた事例もあります。

面接設計やオンボーディングが効率化

ペルソナがあれば、面接時の質問設計も明確になります。「この人の価値観が自社にフィットするか?」という視点での評価軸ができるため、従来のようにスキル重視の選考では拾いきれなかった“カルチャーマッチ”の兆しを見つけやすくなります。

また、入社後のオンボーディングにおいても、想定される背景や志向性に基づいた育成計画を立てやすくなるという副次的な効果も見逃せません。

Z世代向けペルソナ設計のポイントと注意点

Z世代(1996年以降生まれ)をターゲットとした採用では、従来の人材要件だけでは不十分です。育ってきた時代背景や価値観が大きく異なるこの世代に響くペルソナ設計には、マーケティング的な視点と共感設計の技術が求められます。

デジタルネイティブ世代の情報リテラシー

Z世代は、幼少期からスマートフォンとSNSに囲まれて育ったデジタルネイティブです。情報選別能力が高く、企業発信の表面的な言葉には敏感に反応します。そのため、ペルソナ設計においても「どう見せるか」より「どう本音でつながるか」が問われます。

また、信頼する情報源も大きく異なり、企業の公式HPやパンフレットよりも、社員のSNS投稿やYouTubeでのVlog、働く姿のドキュメンタリー動画などを重視する傾向にあります(参考:博報堂Z世代研究所 2023)。

共感できる“リアルな物語”の設計が鍵

Z世代に響くペルソナとは、単なる「仕事が楽しい」「企業理念が素敵」といった理想像ではなく、「自分の仕事が社会にどのような価値を生み出しているのか」「この仕事の意義はどこにあるのか」を、自らの経験や考えを交えて自分の言葉で語れる人物像です。企業の理念やビジョンに共鳴し、自らのストーリーとして体現できている“生きたプロフィール”を持つことで、Z世代の求職者はその企業や仕事への関心や共感をより深めやすくなります。

たとえば、以下のような具体的なエピソードや行動指針をもとにしたペルソナ設計が効果的です。

・学生時代から社会課題の解決を目指すプロジェクトに主体的に参加し、現場での体験を通じて社会との接点を実感している

・SNSを通じて地域活性や社会貢献活動の様子や想いを発信、同世代とのネットワークを築いている

・企業や組織の価値観・ビジョンに深く共鳴し、「誰かの役に立てる仕事」「何のために働くのか」を仲間と考え共有できる

こうした、自分自身の関心や将来像を企業のビジョンや社会的な意義と重ね合わせて語れる“リアルなストーリー”を持ったペルソナであれば、Z世代の共感やエンゲージメントを高めやすくなります。採用ブランディングにおいても、企業側の想いと求職者側の価値観が交差する本質的な訴求が可能となり、「自分ごと化」につながるペルソナ活用が重要です。

求職動機の深層理解に基づく設計

Z世代は「自己成長」と「社会的意義」を両立させたいという志向が強く、その両方を感じられる職場環境を求めています。実際、ディスコ社の「キャリタス就活2024」調査では、「仕事の社会的意義がある企業に魅力を感じる」と回答した学生は全体の73.6%に上ります(キャリタス就活 2024年卒学生調査)。

このため、Z世代向けのペルソナ設計では、スキルや職歴だけでなく「何を大事にしているのか」「どんな未来を描いているのか」を丁寧に掘り下げる必要があります。

ペルソナ設計を活かした採用クリエイティブの展開例

採用ペルソナを設計しただけで終わらせず、それを“体験”として届けるためのアウトプットが重要です。ここでは、実際にペルソナを起点に構成されたクリエイティブ(採用動画・採用LP・パンフレットなど)の展開方法と、そのポイントを紹介します。

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採用動画における“共感導線”の設計

ペルソナの持つ価値観・行動背景を可視化するうえで、採用動画は非常に有効な手段です。 たとえば「成長実感を重視するZ世代向け」のペルソナを設定した場合、次のようなシーン展開が効果的です:

  • 入社前後の変化を語る若手社員のインタビュー
  • 初挑戦したプロジェクトで苦労したリアルな経験
  • マネージャーとの関係や支援体制の描写

これらを通じて、ペルソナに重なる未来像を提示できれば、「この会社は自分にもフィットしそう」という感覚を呼び起こせます。

採用LP・パンフレットにおけるストーリー構成

採用LP(ランディングページ)やパンフレットでは、ペルソナの「検討段階」に応じた構成がカギとなります。具体的には:

  • 最初の興味喚起 → ペルソナが共感しやすい“問い”や“理想のビジョン”で引き込む
  • 中間の納得形成 → 企業理念や制度の背景にある「なぜ」への説明
  • 最後の行動後押し → 同じ価値観を持った社員のメッセージや、リアルな1日の流れなど

このように「読み手の気持ちの動線」に沿って設計することで、ペルソナに最適化された説得力あるクリエイティブが完成します。

応募前体験の整備(プレエントリー施策)

最近では、ペルソナが「応募する前」に体験するコンテンツ設計も注目されています。たとえば:

  • 社員とのオンライン座談会(社風に共感するか確認できる)
  • 1DAYインターンやOBOG訪問イベント(リアルな空気感を知れる)

こうした接点においても、ペルソナ像を起点に「何を不安に思っているか」「どこで共感するか」を軸にコンテンツを設計することで、応募意欲を自然に高めていくことができます。

採用ブランディング施策との連携によるシナジー設計

採用ペルソナの効果を最大化するためには、それ単体で完結させるのではなく、その他の採用ブランディング施策と連携させる視点が重要です。コンテンツ・ツール・イベントなど、複数の接点に一貫性のある“人物像”が通底していることで、候補者にとってのブランド体験が濃密になります。

採用ブランディングの株式会社ジャリアの働く人のイメージ

採用ピッチ資料との連動

採用ピッチ資料は、採用ペルソナの価値観・行動様式に応じて構成すべき重要なドキュメントです。たとえば「挑戦環境を重視する人材」に向けては、以下のような内容を盛り込むことで響きやすくなります:

  • 新規事業開発やジョブローテーションの機会紹介
  • 失敗に寛容な企業文化を語る社員ストーリー
  • キャリアアップ支援制度の具体例

このように、ペルソナが「自分の未来を投影できる情報」を持たせることが、ピッチ資料の訴求力を大きく左右します。

採用動画・LPとの一貫設計

前述のように、採用動画やLPは“体験を届ける”クリエイティブです。ここにペルソナが反映されていれば、動画→LP→説明会→面接と続く一連の接点で「印象がブレない」ブランド体験が構築されます。

この一貫性が、候補者の“納得感”と“信頼感”を醸成し、内定承諾率や定着率の向上にもつながります。

採用イベントや説明会での接点活用

リアルな接点である採用イベントや説明会でも、ペルソナを意識したコミュニケーション設計が有効です。たとえば、価値観に共感しやすい社員を登壇者に選定する、ペルソナの関心領域に合うテーマでコンテンツを設計するなど、事前に描いた“人物像”を起点に体験をデザインすることが、エンゲージメントの深まりにつながります。

まとめ|採用ペルソナ設計は“企業の未来像”を描く作業

ここまでご紹介したように、採用ペルソナの設計は単なる人物像の記述にとどまりません。企業の文化、戦略、求める未来像をかたちにする“設計思想”であり、採用ブランディングを支える基盤そのものです。

明確なペルソナがあることで、ターゲット人材に刺さる情報発信が可能となり、採用マーケティングやクリエイティブ施策、そして面接や入社後のコミュニケーションまでが一貫した体験へとつながっていきます。

特に福岡のような地域密着型のマーケットでは、「地域に根ざした共感性」と「企業らしさ」が重視されるため、ペルソナ設計の巧拙が採用成果に直結します。

今後の採用活動では、単に媒体に出稿するのではなく、「誰の心に届くのか」「その人にどう感じてもらうか」まで設計された“ペルソナドリブン”な戦略が求められます。

その第一歩として、本記事で紹介した設計プロセスや連携施策を、ぜひ自社の状況に照らして取り入れてみてください。

●採用ブランディングとは?重要性や実施手順、成功させるポイントまで徹底解説!

採用オウンドメディアについて解説5

WRITER / HUM
株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 WEBライター

株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。

 

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