インフルエンサーのキャスティング 効果的な選び方とマーケティング成功の秘訣
インフルエンサーマーケティングは、製品やサービスを宣伝するために影響力を持つ個人(インフルエンサー)に依頼し宣伝を行うマーケティング方法です。
その特性上、「どのインフルエンサ―に頼むか」が一番重要な要素であり、対個人であるが故の難しさが大きな壁だと言われています。
インフルエンサーにとって、フォロワー数は人気の証。
ですがマーケティングにおいては、フォロワー数が多ければ多い方がいいというわけではありません。なんとなくでインフルエンサーを選んでしまうと、何の成果もあげられないどころか、思いがけないトラブルに巻き込まれてしまう危険性もあるのです。
今回は、インフルエンサーをキャスティングする上でのポイントや注意点について見ていきましょう。
目次 ターゲットオーディエンスの特定方法:インフルエンサー選びのポイント ソーシャルメディアプラットフォーム別インフルエンサーマーケティング戦略 インフルエンサーの選び方:フォロワー数だけではない重要な指標 |
ターゲットオーディエンスの特定方法:インフルエンサー選びのポイント
ターゲットオーディエンスとは、サービスや製品のメインターゲットとなる顧客グループのことを言います。年齢や居住区エリアといった基準で設定され、「ペルソナ」が個人単位の人物像を指す言葉であるのに対し、それよりは広範囲な、大まかな分類で振り分けられるのがターゲットオーディエンスです。
狙いを絞り、重点的な宣伝活動を行うインフルエンサーマーケティングにおいて、ターゲットオーディエンスを明確化することは非常に重要です。
正確にターゲットオーディエンスを定めることで、無駄のない効果的なマーケティングを行うことができます。
あくまでも想定は「自社が売りこみたい相手」であることを念頭において、しっかりとイメージ像を練り上げていきましょう。
なお、ターゲットオーディエンスの特定は、通常以下の要素に基づいて行います。
デモグラフィック(人口統計情報)
年齢層、性別、人種、職業、家族構成、所得等
地理的要素
ターゲットとなる地域や、その地域特有の価値観、気候条件
心理的要素
性格、仕事や趣味といった、生活の価値観、興味、信念
ニーズと課題
ユーザーが抱えているニーズや要望。
行動的要素
ユーザーの購買履歴や頻度、購買サイクルなど。
コミュニケーションチャンネル
ユーザーが使用するSNSなどのコミュニケーションツール
必要な情報は、主に市場調査や過去の顧客データの洗い直しを行うか、web解析ツールを使用して集めます。同時に、競合他社がどのようなターゲット・オーディエンスを設定しているのかも研究しましょう。
競合相手とターゲットの層が被っていないか、どのようなプロモーションを行っているか、ターゲット層の反応等を参考に、戦略を調整する必要があるからです。
①宣伝したい内容に対する、ターゲットオーディエンスを決定する
インフルエンサーを探す前に、まずは自社のターゲットオーディエンスを明確にしましょう。
出来るだけ細かく、くわしく。ここで定めたターゲットが全ての基準になります。
この時点で、マーケティングを行う「目標」や目標に対する達成度(KPI)も制定しておきます。
「目標」とは具体的な数字ではなく、そのマーケティングを行う目的です。
認知獲得を目指すならばフォロワーの多いインフルエンサーを、販売促進が目的ならばフォロワーの少ないインフルエンサーというように、目標が変われば選ぶべきインフルエンサーも変わってくるので注意してください。
②そのターゲットオーディエンスに合う、プラットフォームを決める
インフルエンサーが活動をする主な場所は、動画共有サイトとSNSです。
売り込みたいものが何なのか、売り込みたい層はどこなのかで選ぶべきプラットフォームも変わります。
③宣伝したいモノ(サービス)と合致するインフルエンサーを探す
④インフルエンサーのフォロワーが、ターゲット・オーディエンスと一致するかどうかを確認する
ジャンル特化型のインフルエンサーには、属性の似たフォロワーがつくことが多い傾向にあります。
たとえば化粧品やファッションは、同じ「好き」でも年齢や好みによって選択肢が大きく変わります。そのため、そのジャンルのインフルエンサーをフォローしているユーザーは年齢層等が似通ってる場合が多い、というのは想像がしやすいのではないでしょうか。
「ターゲットオーディエンス」と一致するインフルエンサーを選ぶことにより、同条件の多くのフォロワーやその先にいる人々、通常のマーケティングでは表在化しにくい「潜在顧客」にまでリーチすることが出来る。これがインフルエンサーマーケティングの強みといえます。
⑤投稿内容の精査
候補を絞り込んだところで、インフルエンサーの過去の投稿内容やフォロワーとのやりとりを確認します。投稿内容に問題がないかはもちろんのこと、人柄やフォロワーとの交流頻度など隅々までチェックしましょう。
その際、ステマや炎上の形跡はないかも、ネット検索など活用し必ず調べておいてください。
ある大手ゲームメーカーが複数のインフルエンサーを起用したマーケティングを行った際、そのキャスティングが批判を集め炎上騒動となりました。
内容としては、一人のインフルエンサーについて、「そのインフルエンサーの普段の言動に問題がある」「こんなに評判の悪い人物を起用するなんて」という理由で既存ユーザーから猛批判を浴びたというものです。
実際、そのインフルエンサーは度々炎上をしていた過去があります。
結局そのインフルエンサーはキャンペーンから降板、という形で一応は収束しましたが、企業には一部ユーザーからの失望と、「『嫌い』を根拠にクリエイターとの契約を切る企業」のレッテルを貼られる結果となっています。
そのインフルエンサーを起用することが、企業にとってプラスになるか。それは結果を見るまではわからない部分はありますが、マイナスに振れる要素は選定の時点で排除できます。
インフルエンサーと向き合う際はデータだけに頼らず、一人の人として見ること。それはインフルエンサーとの信頼関係を作っていくうえで、とても大切なことです。
インフルエンサーが活動する場所は、主にオンライン上に存在するSNSや動画共有サイトです。
前述の通り、インフルエンサーマーケティングは人気がある人を起用すれば成果が出る、というわけではありません。
売り込みたいモノやサービスによって相性があり、効果的な宣伝方法が変わります。
そこで、インフルエンサー選びの最初のステップである「プラットフォーム選び」についてみていきましょう。
ここでは、主に利用されている4つの媒体をご紹介します。
それぞれの特性を理解し、より「向いている」媒体はどれかを考えてみてください。
1.Youtube
最近ではテレビ代わりに、日常的に見る人が多いのではないでしょうか。
Youtubeは動画配信プラットフォームとしては世界最大、国内だけでも6,500万人以上のユーザーを抱えています。その内訳を見ても幅広い世代に、男女問わず利用されており、アクティブユーザーが多いのも特徴です。
Youtubeでは、コラボ動画の公開や生配信を行います。
実際の動きやリアクションを見せることが出来るのが動画の強み。それらを活かし、商品の説明を行うハウツー動画や商品レビュー等が向いています。
Youtubeは尺の長い動画を流せますし、ユーザー自身もその尺の動画にあまり抵抗がありません。
また、コメント欄で直接、PR内容やインフルエンサー個人に対するユーザーの温度感も見ることができます。
2.Instagram
写真、動画に特化したSNSです。国内ユーザー3,600万人で、傾向としては若い女性ユーザーが多い、ということがあげられます。
コスメや美容関連、ファッションなどのタイアップが多いいのも特徴で、ユーザーのアンテナ感度も高くなっています。
そのためユーザーはもともとお気に入りのブランドや商品の公式アカウントをフォローしていることが多く、プロモーションにもあまり抵抗がないといわれています。
インフルエンサーに商品を送り使用感を紹介してもらう、ギフティングが盛んです。
また、「インスタ映え」という言葉があるように、Instagramには見映えを意識した視覚効果の高い写真が多く投稿されています。
ファッションやメイクのような女性向けジャンルばかりではなく、まずは目で楽しませるような、旅行業界やグルメ界隈と親和性が高いのも特徴です。
3.X(旧twitter)
短い文章での投稿がメインとなるSNSです。
国内ユーザーも4500万人と多く、20代以上のアクティブユーザーが多い傾向があります。
リポストやいいねで、フォロワーの、その先にいる人にまで情報が広が広がっていきやすい、拡散力のあるプラットフォームといえます。
広く、速くが特徴で、その速度感故に販売促進というよりは、宣伝効果の方が期待できます。
ただし他のSNSに比べると匿名性が高く、本当に独り言のように呟けてしまうことから、他のプラットフォームに比べて炎上しやすいというデメリットもあります。
インフルエンサー自身に悪気なくても、火のないところでいきなり煙が吹き上がるのがXです。一度Xで炎上してしまうと鎮火はかなり難しい、と考えていたほうがいいでしょう。
4.Tiktok
Tiktokは10代~20代の、若者世代を中心に多く利用されている動画共有SNSです。
利用者数は国内1,700万人と他のプラットフォームに比べると控えめですが、Tiktokは「バズ」が生まれやすく、ここで話題になると一気に広範囲に広がります。
Tiktokというと若者向けのSNSというイメージが根強いですが、現在のユーザーの平均年齢は36.0歳。実は若者世代の、少し上の層にまで届くようになりました。
また、以前はショートムービーに特化していましたが、20204年11月現在では最長60分までの動画が投稿できるようになっています。
インフルエンサーの選び方:フォロワーの数だけではない重要な指標
インフルエンサーを選定するにあたり、まず気にするのはフォロワー数だと思います。
フォロワー数は、そのインフルエンサーの手の届く範囲。依頼料もフォロワー数により増減するため最も重要な数値です。
しかし、選定のためにインフルエンサーを評価する際、気に留める指標は他にもあります。
特に大きな項目はこちらです。
・閲覧数(再生数)
コンテンツがどれだけの人に見られたかの数字です。
フォロワー数と一致するわけではなく流動的ではありますが、フォロワーより多ければそれだけ遠くの人に届いた、ということになりますし、フォロワー数より少なければフォロワーがアクティブではない、最悪を想定するとアカウントの水増しの可能性も出てきます。
・フォロワーとの親和性
インフルエンサーとフォロワーの属性がまるで違う場合、インフルエンサーマーケティングは成功しません。
年齢層や趣味、興味が一致しているかどうかは重要な指標です。
プラットフォーム別注目ポイント
続いて、プラットフォームごとに細かく見ていきましょう
Youtube
・チャンネル登録者数に対する再生数の割合
・各動画の再生数
・寄せられているコメントの内容
登録者が多くても、実際に見てくれる人が少なければ意味がありません。実際の拡散力については、再生数で確認しましょう。
また、コメント欄を見ることでそのインフルエンサーに対するファンの熱量と信頼度がわかります。「PR」がつく動画を見るきっかけとなるのは、大体はインフルエンサー個人への興味関心、好意好感です。温度感をしっかりと確認しましょう。
・いいねの数
・コメントの数
・フォロワーの日本人の多さ
実際の投稿に対し、どれくらいのフォロワーがリアクションをするかで実際の距離感と信頼関係が見えます。
いいねの数は、そのインフルエンサーが支持されている証。コメントの数は、信頼の証です。
「日本人の数」については、フォロワーをお金で買い数を水増しする、「フォロワー買い」を見抜く基準のひとつとなります。
X(旧twitter)
・リポストの数
・投稿の内容、説得力
リポスト数はインフルエンサーが持つ純粋な拡散力の指標となります。
投稿内容については、「少ない文字数で的確に伝えきれるか」が重要です。
ユーモアのある投稿が注目されがちなSNSですが、どれだけ投稿が注目されても、ただ面白いだけでは意味がありません。インフルエンサーの文章力や、広告としての質がストレートに問われます。
Tiktok
・いいねの数、コメント数、シェア数
・おすすめ表示される頻度、再生回数
いいねやコメント、シェア数は多ければ多いほどおすすめに表示されやすくなります。
Tiktokは即効性は高いのですが、とにかく移り変わりが激しく効果はどうしても短期的です。
内容を精査する際は、直近一ヶ月の投稿について注目しましょう。
インフルエンサーとの契約:フォロワーの数だけではない重要な指標
インフルエンサーを起用する際に気をつけなければならないのが、インフルエンサー自身の炎上とステルスマーケティングです。
ステルスマーケティング(ステマ)とは、実際は企業によるPR広告であるのに、その事実を隠す、または分かりにくいようにした広告活動のことを言います。
消費者は「企業による広告」そのものには大なり小なり懐疑的であり、「第三者の感想」に価値を見出す傾向にあります。
だからこそユーザーとしての生の声が聞けるインフルエンサーマーケティングが有効――となるのですが、ステマは、その傾向を逆手に取る手法です。
明確にユーザーを欺く行為であり、ユーザー側もそのような行為、疑わしい投稿については厳しい目を向けています。実際に有名人やインフルエンサーのステルスマーケティングが発覚し炎上したケースも多く、2023年10月には「ステルスマーケティング規制」が制定されました。
これによりステルスマーケティングによる宣伝は景品表示法における「不当表示」にあたるとみなされ、処罰の対象となったのです。
この規制では、故意に行ったものでなくとも「わかりにくい」と思われたらNG、不当表示という扱いになります。
それでは、具体的にどのような行為が「不当表示」とみなされるようになるのでしょうか。
「ステルスマーケティング規制」におけるステマの定義
告示によると、ステマの定義は以下のように定められています。
1.事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示であること(事業者の表示)
2.一般消費者が2の表示であることを判別することが困難であると認められること(判別困難性)
簡単に言うと「企業が自社、もしくは依頼という形で出したPRコンテンツであり」「PR案件である、と消費者が明確に判別できないもの」です。
インフルエンサーマーケティングでは実際にPRを行うのはインフルエンサー個人ですが、投稿内容が企業からの指示に従って作成されている場合はこちらの1に該当します。
インフルエンサーが個人で行う、指示もなければ報酬も発生しないような「おススメ」投稿であれば規制の対象外です。
また、意外と油断しがちなのが「個人アカウント」での拡散です。
その会社に所属する社員だったり関係者だったりが、その関係を隠した状態で個人アカウントで情報拡散を行った場合も1に抵触するおそれがあります。
次に、2の「判別困難性」について見てみましょう。
消費者庁の運用基準については、以下の通りです。
1.企業によるPRであるという記載がないもの
2.PRであるということを部分的にしか表示していない
3.わかりにくい言い回しをしている
4.動画コンテンツにおいて、一瞬しかPRという表記がでない
5.記載はあるが一般的には伝わらない業界用語や暗号などを使用している
6.小さい文字、薄い色を使用したりしてわかりにくくしたり、大量のタグに紛れ込ませたりしている
つまり投稿内容全体を通して、消費者がはっきりと「PRである」と認識できるようにわかりやすく表示されていないといけない、ということです。
ステマ規制の罰則
ステマ規則に違反してしまった場合は、景品表示法7条に基づき措置命令が下されます。
過去に起きた景品表示法違反では、以下のようなペナルティが課せられました。
1.ステマを行ったコンテンツの取り下げ
2.表示義務に違反した事実を消費者向けに公表すること
3.再発防止策を講じること
4.同じ違反行為を繰り返さない
措置命令に従わない場合は、刑事処分を受けなくてはなりません。
その場合は、「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に課せられます(景品表示法46条)。
この規制に違反した場合、規制の対象となるのはインフルエンサーではなく商品・サービスを提供する事業者側になります。様々なリスクを軽減させるためにも、まずは企業側が「どのようなケースがステマに該当するのか」を理解し、インフルエンサーとの間でしっかりとした取り決めを交わしてく必要があるでしょう。
ステマ規制(景品表示法)違反にならないように気を付けること
インフルエンサーマーケティングは企業外の第三者に依頼をして行います。まず、その時点でリスクです。
またその性質上どうしても疑いの目でみられやすく、故意に行うつもりはなくとも、うっかりが疑いにつながっていく可能性もあります。
そのうっかりを防ぐためにも、企業としても細心の注意を払い常に安全策をとれるようにしておきましょう。
1.PRであることをしっかりと、わかりやすく明記する。
PRのタグをひとつつけたらOK、というわけではありません。
たとえば、沢山のタグの中に「#PR」を紛れ込ませるなどの行為は不当表示と見做される場合があります。
タグを付ける時は目立つように一つ目に配置するなど、わかりやすさを重視してください。
同様に、インフルエンサーと企業の関係性もしっかりと明記をする必要があります。企業名、ブランド名なども忘れずに記載しましょう。
また、ステマ対策としてプラットフォームごとに表示ルールが設けられています。
・Youtube
Youtubeでプロモーションを行う場合は、「有料プロモーション」をオンに設定しYoutubeに申告する必要があります。
そうすることで視聴者側にも、「この動画はプロモーションを含む」旨の表示が出るようになる仕組みです。
しかしそれだけではなく、タイトルや概要に「PR」と「企業名(ブランド名)」を記載しておいた方が安全です。
タイアップ用の広告ラベル(ブランドコンテンツタグ)を使用します。
投稿を見た人が一目で広告であるとわかるよう、キャプション先頭に「#PR」「#企業名(ブランド名)」を記載することも推奨されています。
ただし、折りたたんだら見えなくなるような記載の仕方や、コメント欄への記載は正しい表示とはみなされないので注意してください。
また、ストーリーズ内でPRを行う際は、「見えやすいフォントと色」を使い「はっきりと視認できるよう」表示することを心がけましょう。
・X(旧twitter)
Xには細かな規定はありませんが、他のプラットフォームと同じくわかりやすく「PR」であることを明記する必要があります。
投稿時に見えない箇所への記載、引用・ツリーでの記載はNGです。
・Tiktok
TiktokでPRを行うには「ブランドコンテンツ」の設定が必要になります。
コンテンツ開示設定をオンにすることで、その動画コンテンツがプロモーション目的のものであるということを示す「有償パートナーシップ」というラベルが表示されるようになります。
他のプラットフォーム同様、キャプションの先頭に#PRと#会社名(ブランド名)を記載するとなお良いです。その際は、折りたたんで見えなくなるような書き方はしないよう気を付けてください。
2.インフルエンサーの過去投稿をチェックする
依頼をする前に、候補にあがったインフルエンサーの過去の投稿もしっかりとチェックしましょう。
法規制が始まる前(2023年9月30日)以前のものも規制の対象になります。
それが自社製品のものではなくとも、インフルエンサーのイメージダウンは避けられません。
過去にステマの可能性がある発信をしていたら、修正や削除をお願いするか、選定そのものの見直しを検討しましょう。
3.ルールを盛り込んだ契約書をする
インフルエンサーと契約する際には、認識の齟齬がないよう、細かな取り決めが必要です。
投稿ルールや報酬、期限等、後々のトラブルとならないようしっかりとすり合わせを行い、双方の理解、合意のもと契約書を作成しましょう。
契約書には、最低限以下の項目を記載してください
署名
まず、インフルエンサーと企業の正式名称と、署名。契約書が有効になる日付を記入します。
署名は双方が契約内容に合意した証であり、契約書に法的な拘束力をもたせるためのものです。漏れの無いようにしましょう。
業務内容
インフルエンサ―が実際に行う投稿形式や媒体、投稿内容、目標を記載します。
支払い条件
インフルエンサーへの報酬の多くは、フォロワー数に依存します。
ですがフォロワー数は日々増減するため、依頼料も変動してしまう可能性が高いです。
トラブル防止のためにも、この項目には「〇月✕までの単価は〇〇円」という風に、基準となる期間と金額を併せて書いておくといいでしょう。
契約期間
開始日と終了日を設定します。
更新スケジュールや頻度についても具体的に決めておきましょう。
経費について
発生する可能性のある経費の負担や支払い方法についても決めておきます。
現地への交通費、宿泊費などを、「あらかじめ支給するのか」「インフルエンサーに建て替えてもらい後日精算する」のか、支給の期限などを書いておきましょう。
知的財産権
知的財産権とは、創作活動によって生み出されたものを、制作者の知的財産として保護する権利です。これには特許権、商標権、著作権などが含まれ、インフルエンサーマーケティングを目的に作成されたコンテンツも、「創作物」としての扱いをうけます。
動画などのコンテンツを作成した場合、著作権はインフルエンサーにあります。
譲渡を行うのではればそのような契約を結ぶ必要がありますし、そうでないのであれば別途、二次利用についての取り決めをしておくことをおすすめいたします。
ここで最低限決めておきたいのは
・コンテンツの知的財産権がインフルエンサー・企業のどちらに帰属するか
・コンテンツの二次利用の可否、使用できる範囲、利用料、利用期間などです。
秘密保持契約(NDA)
情報の漏洩を防ぐための契約です。
インフルエンサーは外部に情報を発信する職業です。そのため、複数の企業と接触がある他、発表前の情報に触れる機会も多く存在します。
情報漏洩のリスクを考え、機密情報の範囲や、万が一情報老齢が起こってしまった場合の対処方法などを決めておきましょう。
競業避止義務
インフルエンサーが競合他社の依頼を受けないようにするための取り決めです。
同時期に接触をすると競合相手に自社のノウハウや機密情報が流出してしまう可能性があるため、あらかじめ、一定の期間契約を禁止するようにしておきます。
期間もきちんと決めておきましょう。
コンプライアンス
法令を遵守するためのコンプライアンスや禁止事項について細かく明記します。それに違反した場合の処罰方法についても、具体的に決めておくといいでしょう。
法律や契約書は、あくまでも行動を制限するものではなく自身や相手を守るためのものです。
インフルエンサーマーケティングという、傍目にはグレーともとられかねない手法だからこそ、法やルールを守り透明性の高いマーケティングを行うことそのものが企業や商品の信頼を高めることにも繋がります。
効果的なキャンペーンを作るためのインフルエンサーとのコラボレーション戦略
起用するインフルエンサーが決まり、契約まで進めばあとは実践あるのみです。
契約書に記載した業務内容やスケジュールを確認しながら、インフルエンサーと二人三脚でコンテンツを作り上げていきます。
とはいえ、過度な口出しは厳禁です。
インフルエンサーの手法、個性を尊重しながら、ルールという枠の中で最大限「良い」を表現できるようにサポートをする。それが企業側の仕事になります。
インフルエンサーを起用して行うコラボレーション企画には次のようなものがあります。
インフルエンサーの強み、売り込みたいモノとの相性などを見極めて、魅力のあるコラボレーションを展開していきましょう。
コンテンツ作成
インフルエンサ―マーケティングの中でも一番ポピュラーな方法です。
インフルエンサーに実際に商品を試してもらい、動画サイトやSNSに、PRコンテンツを投稿してもらうものになります。
インフルエンサーはあくまでも消費者側です。ユーザー目線の生の声を発信することで信用をしてもらいやすく、近距離、ピンポイントに訴求効果のある宣伝を行うことが出来るというメリットがあります。
ライブコマース
ライブ配信でインフルエンサーに商品紹介をしてもらうという手法です。
生配信故のリアルなリアクションや、実際にユーザーとやりとりを行いながらの商品レビューは信頼感を高めてくれます。
リアルタイムで行われるため、ユーザーはインフルエンサーに対し直接質問をすることもできます。疑問点をその場で解消できるので、素早い販売行動にも繋がりやすいです。
一方的ではない、双方向のコミュニケーションが魅力と言えます。
無償ギフティング
インフルエンサーに対し、商品・サービスを提供し「任意で」投稿をお願いする方法です。
あくまでもプレゼントという体ですので、対価を求めるものではありません。そのため投稿内容はおろか、「投稿をするかどうか」も任意となります。
無償ギフティングでは、インフルエンサーの投稿、PR活動については一切コントロールをすることができないのです。
ですが、本当に「いい」と思えば自主的に紹介してくれるので、熱量が高く質のいいレポートを発信してくれます。商品以外の費用がかからないのとも大きなメリットです。
なお、無償ギフティングについても「ステマ規制」の対象になります。報酬がなくても広告を行う事業者として何らかの指示を行った場合は、「PR」の表記が必須です。
「PRをする際はハッシュタグを付けてください」とお願いするのも「指示」に該当します。
あくまでも商品を送っただけ、その後はインフルエンサーの自由意志という状態でしたらステマ規制法には抵触しませんが、消費者目線でみるとあまりクリーンとは言えません。
最初から「商品をプレゼントするので無償でPRをお願いします」とお願いする形が無難ですが、無償故に引き受けてくれるインフルエンサーはかなり少ないというのが現状です。
現地訪問
インフルエンサーがイベント会場や施設、店舗へ実際に出向き、その様子をライブ配信やSNSで発信する、というものです。
グルメや旅行といったジャンルでよくとられる手法ですが、「地域のイベント」にも強い力を発揮します。そのエリアの情報を発信しているインフルエンサーを起用すれば、ピンポイントで無駄なく対象エリアのユーザーに訴えかけることができるためです。
また、インフルエンサー自身とコラボしたファンイベントの開催も盛んです。
アンバサダーとして起用する
インフルエンサーをそのブランドの広告塔にし、長期間に渡りブランドの顔としてPR活動を行ってもらう、という手法です。
ゆっくり時間をかけてインフルエンサーとの関係を構築できる他、深く、そして広く情報を伝えることが出来ます。
デメリットとしては、長期契約のためコストがかかる、ということ。フォロワー数は水物であるため、インフルエンサー自身の影響力が安定していない、ということがあげられます。
長い目で見ると、不安定さはデメリットです。
また、とにかくイメージが大事です。インフルエンサーが炎上してしまうと、ブランドイメージにまで累が及ぶ可能性があります。
共同ブランドの立ち上げや商品開発
インフルエンサーの強みを活かした、商品開発や新ブランドの立ち上げもよく見かける手法です。最近では人気Youtuberが食品会社とタッグを組みラーメンを開発し大きな話題となりました。
インフルエンサーとの商品開発のメリットは、ユーザー視点を持つインフルエンサーとそのフォロワーを巻き込むことにより、ニーズに応えた、訴求力の高い商品開発ができるというところにあります。
それに加え、インフルエンサーはそのジャンルのトレンドに敏感です。そのアンテナと持ち前のセンスで、ヒット商品を生み出すことが出来るかもしれません。
デメリットとしては、インフルエンサーの影響力が強くなりすぎると、ブランドの独自性が損なわれてしまう可能性がある、ということがあげられます。
商品によっては「インフルエンサーを看板とした企画ものの商品である」というだけで商品の質を低く見積もられてしまうことがあるため、向き不向きもあるようです。
また、契約関係が複雑になってしまうこともデメリットのひとつです。
商品名やデザイン等の知的財産権、利益分配の取り決めが不明確だと、後々大きなトラブルになりかねません。
インフルエンサーの多くは、企業に所属するタレントではなく個人です。契約に慣れている人ばかりではありません。
契約時にしっかりと、細かな部分まで目を配り約束ごとを決めていきましょう。
インフルエンサーによるブランド認知向上の実践
「認知度」と「知名度」
似たような意味に捉えられがちですが、この二つの言葉はマーケティングにおいてはっきりと区別されています。
「知名度」とは、社名や製品名が知られている度合いのこと。
「認知度」とは、そのサービスや内容について知られている度合いのこといいます。
「名前は知っているけれど何をやっているかわからない」そんなお店や会社に、心当たりはありませんか?
それは「知名度」はあるけれど「認知度が低い」状態です。
上げたいのは「知名度」なのか「認知度」なのか。それによって、マーケティングの手法は変わります。
例えば、企業向けのCMの多くは「とにかく知ってほしい、知名度を上げたい」という目標のもと制作されているものが多く、その内容から具体的な業務内容まではなかなか読み取ることができません。
それに対し、消費者向けのCMの多くは「買ってほしい」「利用してほしい」という消費行動を訴えるものです。そのためには、外側ではなく中身。知名度よりも認知度の向上を図る必要があります。
企業が伝えたい中身。その深いところに触れることが出来るインフルエンサーマーケティングとは、相性が良いと言えるでしょう。
インフルエンサーマーケティングの効果
知名度ではなく、認知度を上げることに重きをおいた場合、インフルエンサーマーケティングはとても強い効果を発揮します。
ジャンル特化型のインフルエンサーの強みであるジャンル内の影響力をそのまま利用できる上、そのジャンルのユーザーや潜在顧客に対しピンポイントにアプローチできるため、宣伝として「中身」を正しく伝えることが出来るからです。
たとえば、美容系の商品やダイエット食品等は、企業が主張する効果よりも、他のユーザーの実際の使用感、効果を気にする人が多いのではないでしょうか。
それこそがユーザーが本当に知りたい「中身」です。
そこでそのジャンルに強いインフルエンサーを起用します。ユーザーは、インフルエンサーを通してその商品を見るでしょう。
「あの人がPRしている商品」として認知されるだけではなく、そのインフルエンサーに対する信頼感がそのまま商品に乗ります。
製品の一、ユーザーであり、信用のできるインフルエンサーによるPRは、より具体的なイメージを相手に与えることができるのです。
「認知度」を上げるための効果的な戦略
認知度を向上させることを目標としたときに特に効果的なのが、ストーリーテリングです。
ストーリーテリングとは、「物語」を使いユーザーの感情や共感を呼び起こす方法で、インフルエンサーの多くはフォロワーとの関係構築のためにストーリーテリングを用います。
ただ単に情報の受け渡しをするのではなく、その背後にある体験やストーリーを共有することで信頼関係を深めているのです。
インフルエンサーマーケティングでのストーリーテリングの例としてわかりやすいのは、フィットネスやダイエット系のコンテンツです。
インフルエンサーは実際の使用感や手ごたえなどの詳細なレポートと共に、わかりやすく「経緯」と「結果」を伝られます。
また、美容や育児コンテンツにおいて、インフルエンサー自身が抱える悩みや困りごとに対する解決策として商品を提案する、という形も有効です。
身近でリアルな体験を共有することで、同じ悩みを抱えるフォロワーに「共感」を与えるでしょう。
認知度の向上は、そのまま、売上につながります。そして高めた信頼と成果は、ネットワーク特有の伝播力で、フォロワーのその先へと広がっていく。
インフルエンサーマーケティングは、「良いな」が伝染することで広がるマーケティング手法なのです。
まとめ
インフルエンサーマーケティングを成功させるためには、綿密な計画と準備、そして徹底した調査が必要になります。
目標を設定し、それに応じた適切な場所(プラットフォーム)、人(インフルエンサー)、方法(手法)を選ぶ。
それらが全てかみ合った場合の効果は絶大ですが、どれか一つでも的を外してしまうと、何の効果も得られない可能性もあるのです。
手間と時間を惜しまないこと。ひとつひとつの選択に、きちんとした根拠を持つこと。
それがインフルエンサーマーケティングを成功させる秘訣です。
弊社はインフルエンサーマーケティング会社と提携しており、キャスティングから企画立案、マネジメントや効果測定など一括代行が可能です。
小規模な会社でも、訴求力の高いインフルエンサーとのマッチングを実現し、地域との親和性が高いインフルエンサーマーケティングをご提案いたします。
インフルエンサーマーケティングに興味がある方はもちろん、他のマーケティング手法に取り組みたい、現在の運用を改善したいという方も、お気軽に弊社までお問合せ下さい。
WRITER / koma 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 WEBライター 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。 |