ブランドブックとは?インナーブランディングに必須ツールの制作目的やポイントを解説
社外に向けたブランディングの施策は様々あり、企業の多くが自社のイメージ形成に取り組んでいますが、社内に向けたブランディング(インナーブランディング)には着手できていない企業も多いのではないでしょうか。
インナーブランディングに効果的なツールがブランドブックです。企業のミッションやビジョン、バリューなどを明確化・共有することによって社員のモチベーションアップにつながり、利益向上が期待できます。
そこで今回は、ブランドブックの目的や内容、制作時のポイントについて解説していきます。
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ブランドブックとは
ブランドブックとは、企業やブランドが理想とするビジョンや大事にしている理念、コンセプト、提供する価値など「どんなブランドであるか」をまとめた冊子を指し、社内外で一貫したイメージを共有・浸透させるために作成されます。
従来のブランドブックは、社員にブランドの価値や目指すべきビジョンを改めて示すためだけのツールでした。
しかし現在は、きちんと理解して共感してもらったうえで、ブランドが理想とする、世間に浸透させたいイメージを体現するような行動を促すためのツールへと立ち位置が変化しています。
ブランドブックは社員に対して配布されるだけでなく、顧客や求職者に対して配布されることもあり、自社ブランドの認知拡大やイメージアップの促進に貢献します。
ブランドブックの目的
ブランドブックには以下のような目的があります。
インナーブランディングの強化
ブランドブックの最大の目的は、インナーブランディングの強化です。
顧客に対し、企業が考える理想的なイメージを浸透させるためには、まずは社員自身がブランド価値を理解する必要があります。
外側だけ取り繕って、「我々はこういうブランドです!」と発信しても、内部にいる社員の考えや行動がバラバラでブランドの意に沿わなければ、いつまで経ってもブランドとしての価値は伝わらず、イメージアップも叶いません。
強制的にルールとして縛り付けるのではなく、企業の一員であるという自覚を持ち、企業の考えに共感すれば、おのずとイメージに沿った行動ができるようになります。愛着や誇りを持って働けるようになり、利益向上に貢献してくれるでしょう。
このように、ブランドブックは全員が同じ志を持って、日常的にブランドの顔としての意識を持ち、理念やビジョンを実現するためのツールと言えます。
競合との差別化を図り、ファン化させる
ブランドブックの2つめの目的は、競合との差別化を図り、ファン化させることです。
現在のモノが溢れかえっている世の中では、類似した商品やサービスも多く生まれます。そのため、ただ「新発売です!」「良い商品ですよ!」と売っていてもユーザーは振り向いてくれません。
競合との差別化がどんどん難しくなっているなかで、ユーザーはモノそのものだけでなく、モノを売っているブランドが提供する世界観や未来などの付加価値を重視するようになっています。
自分がより共感するビジョンや考え方を持っているブランド、自分の理想とする未来に近づけそうなブランドに愛着を感じ、ファンとなって長期的な関係を築いていくようになります。
このように、ブランドブックを通して社員からユーザーに、またはユーザーに直接、提供できる価値を浸透させていくことで選ばれるブランドになるのです。
企業やブランドに共感する人材の採用
ブランドブックの3つめの目的は、企業やブランドに共感する人材の採用です。
新卒や転職者に向けた会社説明会でブランドブックを配布し、企業の深部にある想いを伝えることで、共感してくれる人材が自然と集まり、質の高い採用活動が可能になります。
企業のビジョンや理念が浸透していれば、入社してから帰属意識や愛着心を高めようと注力しなくとも、社員は入社前から目指すべき未来やとるべき行動を理解しているため実行に移しやすくなります。
このように、ブランドブックはビジネスの発展に貢献してくれる、自社との親和性が高い人材とのマッチングを叶えてくれるのです。
ブランドブックの構成要素
ブランドブックは以下のような要素で構成されています。
ミッション
ミッションは、企業が社会に対して果たすべき使命、存在意義です。
どんなことを成し遂げるために自社が存在しているのかをはっきりと示すことで、社員たちもやるべきことが見えてきやすく、モチベーションを維持したまま業務に取り組むことができます。
ビジョン
ビジョンは、企業が目指す理想の姿、将来のありたい姿です。中長期的な目線で、どんな企業を作り上げていきたいのかを示します。
描いている未来の実現に向かっていることを社内外に向けて明確にすることで、社員全員が同じ方向を向いて進むことができます。
バリュー
バリューは、ミッションやビジョンを実現するために大事にしている価値観や行動指針です。
自分がどのように考えてどのように行動すればいいのかを具体的に示すことでひとりひとりが主体性を持ってブランド価値向上に努めることができます。
ブランドアイデンティティ
ブランドアイデンティティは、特徴や強み、ロゴデザインなど特定のブランドがそのブランドとして認識される象徴的な要素のことです。顧客に持ってもらいたい企業のイメージとも言えます。
ブランドアイデンティティが明確になれば、社員もブランドイメージに沿って行動しやすくなり、認知度が高まればこういう部分で他社とは違うと認識され、マッチするユーザーを惹きつけることができます。
ブランドコンセプト
ブランドコンセプトは、ブランドの軸となる価値を言語化したものです。ユーザーに対してどのような価値を提供するのかを明確にしてブレることのないブランド価値を示します。
かっこよさではなく、わかりやすさやインパクトを意識して作成することで一目見ただけでユーザーや社員の記憶に残るものになります。
ブランドのストーリー
ブランドのストーリーとは、ブランドの歴史や紡がれてきた想いのことです。ブランドがこれまでどのように歩んできたのかがわかれば、ブランドへの理解がより深いものになり、共感を集めることができます。
社会やユーザーのためにどんなことをやってきたのか、普段の生活では見えないブランドの裏側を見ることで、ユーザーとの距離も縮まり、興味を増大させるきっかけにもなります。
ロゴデザインの意味
ロゴデザインとは、企業やサービス、商品などの名称をデザインで表現したものです。ブランドに込めた様々な想いを文字だけでなくロゴとしてデザインすることで、世界中に自社の存在意義を発信できるようになります。
パッと見ただけではわからない、ロゴデザインに込められた意味をブランドブックに掲載することで、これまでは「ロゴ」としてしか認識していなかったものが、背景にある意味も同時に想起されるようになり、認知度やイメージの向上につながります。
ブランドブック制作の流れ
ここでは、制作会社がブランドブックを制作する際の流れを説明します。
1. ヒアリング
まずは、ブランドブック制作における
- 目的
- ターゲット
- 背景
- 課題
- 使用シーン
- 社員の想い
- 要望
などをヒアリングします。
ブランドブックを作るには、作り手が企業・ブランドについて深部まで知る必要があるため、ブランドについて説明を受けたり、資料を読み込むことで理解を深めます。
2. コンセプト・テーマ設定
ブランドブック制作の根幹となるコンセプトとテーマを設定します。
コンセプトは、作り手側の認識を一致させ、同じ方向を向いて進めるための指針となります。
テーマは、ブランドブックを通して最も伝えたいことであり、制作の軸となります。
ブランド理解を通して感じた強みやイメージから連想してキーワードを洗い出し、具体的な人物像となるペルソナの設定とともに、あらゆる切り口の中から目的を果たすために最適なものを設定します。
3. 企画書提出
細部までリサーチして得た知識やクライアントからの要望、競合分析のデータをもとに、ブランドブックの企画書を提出します。
企画書には、コンセプトやテーマ、目指すべきゴール、ゴールにたどり着くためのアプローチ法、ページネーション(ページ割り)、ざっくりとしたデザインの雰囲気、制作スケジュールなどを記載します。
特にブランドブックの骨組みとなるページネーション設定は非常に重要です。土台がしっかりしていないとすべてが崩れてしまうため、何度も打ち合わせを重ねて修正します。
4. 制作
企画書がまとまったらいよいよ制作です。掲載する写真の撮影や取材を行い素材を集め、ブランドブックとして形にしていきます。
ブランドブックは紙質にもこだわることが多いためブランドごとに使う紙も異なります。例えば、自然由来の製品を販売している企業であれば、環境負荷の少ない紙や印刷インクを使ったりもします。
5. 修正
制作すればそこで終わりではありません。
ブランドブックはブランドを表し、この先も引き継がれていくものであるため企業の想いもひとしおです。提出したものがイメージと少しでも異なるものであった場合は修正が入ります。
制作過程で何度もやりとりが発生しますが、一旦出来上がってからもこまめに確認をとり、納得のいくように仕上げます。
6. 納品
無事に修正が終われば納品です。
納品したブランドブックは社員に配布されたり、講演会やワークショップで利用されます。
また、社員が常に持ち歩けるようにブランドブックの内容を簡潔にまとめ、手のひらサイズの冊子にしている企業もあります。
効果的なブランドブックを制作するポイント
では、効果的なブランドブックを作るためにはどのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか。ここでは3つに絞って紹介します。
ブランドのことを徹底的に知る
ブランドブック制作でまず大事なことは、企業やブランドのことを徹底的に知ることです。
制作する側の知識が浅かったり、認識がバラバラな状態では当然ながらブランドブックを作っても読者の理解は深まらず、全員が同じ方向を向いて進むことができません。
曖昧になっているビジョンやミッションを改めて定義づけ、実現するために自社がこれまでどんな進化や成長を遂げてきたのかを一から知る必要があります。
そうして徹底的に知る作業をすることで新たな強みや独自性に気付けることもあるのです。
外注する際も、どんな想いを持ってどんな未来を描いているのか、打ち合わせで余すことなく伝えることで、最適な伝え方で想いを最大限に反映したブランドブックを制作してもらえます。
読後感を意識する
ブランドブック制作では、「読後感」つまり読者が読んだ後にどんな気持ちになるのかを意識することが重要です。
ブランドブックに限らず、私たちは何かコンテンツを見たり読んだりした際に様々な感情を抱きます。もちろん、肯定的な感情ではなく否定的な感情を持つこともあるでしょう。
読み終わった後に、心を動かし、気付きを与え、最初に設定したテーマが伝わっていることが理想です。
ブランドブックを読んだ社員に「この会社で働いていてよかった」「もっと会社に貢献できるように頑張ろう」、ユーザーに「応援したい」「ここの商品、買ってみようかな」などと思ってもらえたら嬉しいですよね。
読まれることのその先の読後感まで考えて作られたブランドブックは、肯定的・好意的な感情を呼び起こし、企業に対する好感度を高めたり、何度でも読みたいと思ってもらえます。
広い視野で考える
ブランドブック制作では、広い視野で考えることも重要です。
ある特定の職種についてなどひとつの側面に焦点を絞ってしまうと、他の業務に携わる社員が自分ゴト化できなくなってしまい、帰属意識を高めることができません。
すると、自分が働く意味や企業が伝えたいメッセージがぼやけ、いつまでもブランドが理想とする姿に近づくことができないままになってしまうでしょう。
そんな事態を防ぐためにも、ブランドブック制作では全体を見渡し、全員がこの会社に存在していること、企業のビジョンやミッションを遂行するために貢献していることを示し、当事者意識を持てるような設計にしましょう。
まとめ
今回は、ブランドブックの目的や制作の流れ、ポイントについて解説しました。
ブランドブックは、企業の想いや描く未来を社内外で共有し、インナーブランディングや競合との差別化を図るツールです。
企業の存在意義を明確にすることで社員のエンゲージメントが高まり、読後感を意識することで何度でも読まれ、高まったエンゲージメントを維持することができます。
企業が歩んできた道と、ミッション遂行のためにこれから進んでいくべき道の架け橋となるようなブランドブックを制作し、ブランド価値を高めていきましょう。
弊社では、ブランドブックを制作するにあたって、企画立案~制作まですべて社内で行い、ワンストップで承ります。
広告代理店だからこそできるブランディング計画から始まり、企業様と伴走しながら社内外問わずブランド価値を伝えられるブランドブックを制作します。
ブランディングに興味がある方や、ブランドブックを通してイメージアップを図りたい方は、お気軽に弊社までお問い合わせ下さい。
WRITER / HUM 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 WEBライター 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。 |