GoogleがサードパーティCookie廃止を撤回!背景や代替策の展開、今後の影響を解説
Googleが2025年初めからChromeにおけるサードパーティCookieの廃止を開始すると発表していたのがまだ記憶に新しいですが、2024年7月23日に廃止の撤回が発表されました。
サードパーティCookieの代わりとなるシステム開発を進めていたものの、関係各所からのフィードバックと本格的な移行の難しさなどが原因とみられ、今後は開発の続行とプライバシー保護強化につながる新機能を追加するとしています。
そこで今回は、サードパーティCookie廃止が撤回された背景やCookie規制をめぐるこれまでの流れについて解説していきます。
目次 サードパーティCookieの代替策 プライバシーサンドボックス Cookie規制をめぐるこれまでの流れ依然としてCookieレス対策は重要 |
GoogleがサードパーティCookie廃止を撤回
2024年7月23日、GoogleはChromeのサードパーティCookieを廃止する方針を撤回し、プライバシーを保護する新たな機能を追加すると発表しました。
参照:グーグル、サードパーティCookie廃止方針を撤回|Impress Watch
Googleは2020年1月にサードパーティCookieの廃止を発表していましたが実施は延期され続け、2024年4月にようやく2025年初めから全ユーザーのサードパーティCookieを段階的に廃止する方針を示しました。
そのため、多くの企業が完全なサードパーティCookie廃止に対応しようと画策していましたが、ここにきて突然の廃止撤回が何の前触れもなく発表され、業界に驚きと困惑が広がっています。
Cookieの仕組み
そもそもCookieとは、ユーザーがWEBサイトを訪問した際に一時的にスマートフォンやPCに行動履歴や入力情報が保存される仕組みのことです。
Cookieを活用することで、ユーザーはログイン時などにいちいち情報を入力する必要がなくなり、以前カートに入れた商品もそのまま表示してくれるため再度探す必要もありません。
また、サイト運営者は訪問ユーザーの行動をトラッキングできるため、現状を分析したりマーケティング施策の実施に役立てることができます。
Cookieにはアクセスしたサイトのドメインが直接発行するファーストパーティCookieと、第三者のドメインが発行するサードパーティCookieがあります。
サードパーティCookieが規制対象となった理由
Googleが規制の対象としていたのはサードパーティCookieです。
サードパーティCookieは第三者のドメインが発行するため、ユーザーの自社サイトでの行動以外の動きも追跡することができ、ドメインをまたいだ横断的な行動把握が可能な点で広告配信や効果測定で非常に重宝されてきました。
しかし、サイトを訪問すると勝手に自分の行動を追跡されることに対し不快感を感じるユーザーも多く、プライバシーの侵害であるとしてサードパーティCookieを廃止する動きが世界中で進んでいました。
サードパーティCookieの代替策 プライバシーサンドボックス
Googleはこのようなプライバシー強化の動きを受け、サードパーティCookieの代替策としてユーザーのプライバシー保護と効果的な広告配信の両方を実現する「プライバシーサンドボックス」というシステムの開発を行ってきました。
プライバシーサンドボックスには、プライバシーを担保しながらリターゲティング広告を配信したり興味関心に沿ってターゲティングすることが可能な技術をはじめとする様々なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が提供されています。
※APIとはソフトウェアやプログラム同士をつなぐインターフェ-スのこと。
プライバシーサンドボックスは期待できるが多大な作業が必要
Googleのアンソニー・チャベス氏は、プライバシーサンドボックスについて関係各所からフィードバックを受け、以下のように認識していると発表しています。
- 今後もプライバシーサンドボックスAPIのパフォーマンスにさらなる向上が期待できること
- 一方で、プライバシーサンドボックスへの移行には多大な作業が必要になり、与える影響も非常に大きいこと
以上の点を踏まえて、以下のように綴っています。
サードパーティの Cookie を廃止するのではなく、ユーザーがウェブ閲覧全体に適用される情報に基づいた選択を行える新しいエクスペリエンスを Chrome に導入し、いつでもその選択を調整できるようにします。 |
引用:A new path for Privacy Sandbox on the web|The Privacy Sandbox
プライバシーサンドボックスに対して性能向上のための投資は引き続き行い、追加でシークレットモードにIP保護(ユーザーのIPアドレス匿名化)を導入する予定としています。
プライバシーサンドボックス実装はGoogleの市場価値を低下させる?
これまで、GoogleがサードパーティCookie規制を何度も延期してきたのは広告業界団体からの反発の影響も大きかったと考えられます。
プライバシーサンドボックスはサードパーティCookieに比べてデータ収集能力が十分ではないとし、英国の規制当局から欠陥を指摘されたり、電子フロンティア団体からも非難を受けたり、厳しい目が寄せられていました。
さらに、実装には時間がかかるため、Googleがプライバシー サンドボックスの性能向上に時間を費やしている間にザ・トレード・デスクやアマゾンなどの競合他社がサードパーティCookieに代わるシステムを開発し、提供を開始してしまう可能性があります。
そうなると、市場におけるGoogleの立場が弱くなるため、それを懸念してサードパーティCookieの廃止撤回及び新たな機能の追加へと方針を転換したのかもしれません。
参考:UK regulators say Privacy Sandbox isn’t ready for market|EMARKETER
Cookie規制をめぐるこれまでの流れ
2000年代からEUやアメリカで着々と進んできたCookieに関する個人情報保護の法規制の流れに乗り、日本でも2022年に「改正個人情報保護法」や「改正電気通信事業法」が施行され、Cookieデータの活用にはユーザーの同意を得ることが義務付けられました。
法律で規制されるとともに、主要WEBブラウザでもサードパーティCookieの規制強化が進められてきました。
Apple Safari
- 2017年にITP(Intelligent Tracking Prevention)と呼ばれる、広告のリターゲティングや横断的なトラッキングを防止する機能を実装し、サードパーティCookieの規制を開始。
- 2020年3月にサードパーティCookieをデフォルトで完全に廃止。
- 2023年4月にファーストパーティCookieの場合でもデータの保持期間は最大7日間に規制。
参照:2023年4月、SafariアップデートでITPのCookie規制がさらに強化。最新ITP対応のコンバージョン計測ソリューションをFLUXが提供開始|PR TIMES
Microsoft Edge
- 有害な可能性のあるトラッキングのブロック機能を導入。追跡防止レベルを「ベーシック」「バランス(推奨)」「厳密」から選べ、厳密モードを選ぶことでほとんどのサイトのトラッキングをブロック可能。
- 2024年3月にサードパーティCookieの代替案となる「Ad Selection API」を発表。数か月のうちにEdgeユーザーのうち1%未満を対象にサードパーティーCookieを非推奨化する実験を開始し2024年中は継続予定。
参照:MicrosoftがEdgeでのサードパーティークッキー廃止へ、代替APIサービスも発表|日経XTECH
Google Chrome
- 2019年にサードパーティCookieの代替案としてプライバシーサンドボックスを提唱。
- 2020年1月に2022年末までにサードパーティCookieを廃止すると発表したが2023年後半までの計画延期を発表。
- 2022年7月に2024年末までにサードパーティCookieを段階的に廃止すると発表したが、2024年4月に延期を発表。2025年初頭から開始を予定。
- 2024年7月23日にサードパーティCookieの廃止を撤回。新たなプライバシー制御機能をChromeに追加すると発表。
参照:Google Chromeの3rd Party Cookie廃止が3度目の延期決定!廃止はいつ?影響や代替手段も解説|デジタルマーケティングブログ
依然としてCookieレス対策は重要
サードパーティCookie廃止が撤回されたことで、ひとまず安心したWEBマーケテイング担当者の方もいらっしゃるかと思います。しかし、今回の件でCookieレス対策を行わなくて良くなったわけではありません。
Chromeは世界シェアNo.1のブラウザですが、日本ではAppleユーザーが多いためSafariのシェア率も高いです。よってSafariユーザーも施策の対象となりますが、Safariは一足先にサードパーティCookieの活用を全面廃止、またファーストパーティCookie規制も強化されているため、いつまでもCookieに頼る施策を行っていてはSafariユーザーと接点を持つことができず、広告の最大効果を得るのは難しいでしょう。
また、GoogleはサードパーティCookie廃止を撤回したものの代替策となるプライバシーサンドボックスの開発は続行していることからも、プライバシー保護強化に対する姿勢は今後も変わらないでしょう。今ではないにしろサードパーティCookieが廃れる未来が来る可能性は十分にあるのです。
Cookieに依存しない技術の活用
よって、依然としてCookieレス対策は重要であり、Cookieに依存しない技術の活用が望まれます。
例えば、WEBサイトを訪問したユーザーに対してIDを付与する「共通IDソリューション」が効果的です。ユーザーから直接提供された情報を暗号化して生成する確定IDとIPアドレスや使用デバイスなどの情報をもとに同一ユーザーを推測して生成する推定IDを組み合わせることで、プライバシーを保護しながら精度もリーチもカバーした広告配信を実現できます。
このようにサードパーティCookieが廃止されても代替技術は次々に開発されているため、自社が活用できそうなものを導入してみることも検討しましょう。
まとめ
今回はサードパーティCookieの廃止撤回の背景やこれまでのCookie廃止の流れについて解説しました。
廃止撤回によってこれまで通りサードパーティCookieを活用することはできますが、世界中でプライバシー保護への関心が高まっている事実は変わらないため、今後もCookieに依存した施策を続けていくことはおすすめできません。
Cookieレス時代に向けた技術開発が進み、サードパーティCookieを使わずとも効果が期待できるソリューションの活用がすでに広がっているため、各技術を比較検討し、ユーザーが安心してネットを利用できる環境づくりと広告の成果創出の両方を実現しましょう。
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WRITER / HUM 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部 WEBライター 株式会社ジャリア福岡本社 WEBマーケティング部は、ジャリア社内のSEO、インバウンドマーケティング、MAなどやクライアントのWEB広告運用、SNS広告運用などやWEB制作を担当するチーム。WEBデザイナー、コーダー、ライターの人員で構成されています。広告のことやマーケティング、ブランディング、クリエイティブの分野で社内を横断して活動しているチームです。 |